01統合失調症とは
統合失調症は、幻覚・妄想・思考の混乱・感情の平板化などを特徴とする精神疾患で、脳内の神経伝達物質の機能異常が関与していると考えられています。日常生活や対人関係に支障が出ている場合は、早めの受診をおすすめします。抗精神病薬と心理社会的支援を継続することで、多くの方が回復を目指せます。
生涯に発症する割合(生涯罹患リスク)は約0.7〜1%とされています(WHO Fact Sheet, 2022)。10代後半から30代にかけて発症することが多い疾患です。決して珍しい病気ではなく、適切な治療と支援により、多くの方が回復を目指せます。
WHOによると、適切な治療を受けた方の約3人に1人が完全寛解に至るとされています。また、約半数の方が社会生活を送れる水準まで改善するとの報告もあります※1。「一生悪化する病気」ではなく、早期発見・継続治療・心理社会的支援で回復を目指せる疾患です。
02こんな症状はありませんか?
以下は統合失調症でよくみられる症状です。当てはまるものがないか確認してみてください。
陽性症状(ふだんにない体験が加わる)
- 実際にはない声が聞こえる(幻聴)
- 誰かに監視・盗聴されている気がする(被害妄想)
- テレビや周囲の出来事が自分に向けられていると感じる(関係妄想)
- 考えがまとまらず、話のつじつまが合わなくなる
- 急に笑い出す、独り言が増えるなどの行動の変化
陰性症状(本来あるものが減る)
- 意欲がわかず、何もする気になれない
- 感情の表現が乏しくなり、喜怒哀楽が減った
- 人付き合いを避け、引きこもりがちになった
- 身だしなみや日常生活に無頓着になった
認知機能の変化
- 集中力が続かず、仕事や勉強が手につかない
- 記憶力が落ちたと感じる
- 段取りを立てて行動することが難しくなった
このチェックリストは診断を確定するものではありません。気になる症状がある場合は、専門医にご相談ください。
03統合失調症はなぜ起こるのか
統合失調症の原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。これは「脆弱性ストレスモデル」と呼ばれる考え方で説明されます。
遺伝的要因
家族に統合失調症の方がいる場合、発症リスクがやや高まることが知られています。一卵性双生児の一致率は約48%、一親等血縁者のリスクは一般集団の約10倍とされています。ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではなく、環境要因との相互作用が重要です。
脳の機能的要因
脳内のドーパミンという神経伝達物質の過剰が、幻覚や妄想などの陽性症状に関与するとされています。また、前頭前野の機能低下が意欲や認知機能の低下と関連していると考えられています。グルタミン酸系の異常も研究されています。
環境的要因
強いストレスや対人関係の問題、生活環境の変化などが引き金になることがあります。睡眠不足や社会的孤立もリスクを高める要因です。
大切なのは、発症は「本人のせい」ではないということです。脳の機能的な変化と環境的なストレスが重なることで起こる疾患であり、適切な治療と環境調整で症状の改善が期待できます。
04統合失調症はどう治療するのか
統合失調症の治療は「薬物療法」と「心理社会的アプローチ」の二本柱で進めます。治療の目標は、症状を和らげ、社会生活への復帰を支援することです。
薬物療法
抗精神病薬による治療が基本です。抗精神病薬には定型抗精神病薬(第一世代)と非定型抗精神病薬(第二世代)があります。現在は副作用が少ない非定型抗精神病薬が第一選択として広く用いられています。脳内のドーパミンの働きを調整し、幻覚や妄想などの陽性症状を和らげます。再発予防にも重要な役割を果たし、服薬を継続することで再発リスクを大幅に下げられることがわかっています。
飲み忘れが心配な場合は、持効性注射薬(LAI)という選択肢もあります。副作用については主治医とよく相談しながら、薬の種類や量を調整していきます。
心理社会的アプローチ
心理教育:ご本人とご家族が病気の仕組みや対処法を理解することで、再発の早期サインに気づきやすくなります。
認知行動療法(CBTp):幻聴や妄想への柔軟な対処法を学びます。「これは症状だ」と認識する力を養い、日常生活での困りごとを減らしていきます。
認知リメディエーション:注意力や記憶力、思考の柔軟性を高めるトレーニングです。就労や日常生活に役立つ力を取り戻すことを目指します。
生活習慣の見直し
規則正しい睡眠と食事、適度な運動は回復を支える大切な土台です。有酸素運動(ウォーキング等を週150分以上)が症状の改善に寄与するとの報告があります(Firth et al., Schizophrenia Bulletin, 2017)。ストレスの管理や、アルコール・薬物を控えることも再発予防に重要です。
回復までの流れ
- 安定化フェーズ(最初の3か月):服薬の調整、心理教育、生活リズムの立て直しを行います。
- スキル構築フェーズ(3〜12か月):認知行動療法や就労支援を開始し、社会復帰への力を養います。
- 維持・拡張フェーズ(1年以降):再発予防を続けながら、自分らしい生活を取り戻していきます。
上記は一般的な目安です。回復の経過には個人差があります。
05銀座泰明クリニックの治療方針
当院では、精神保健指定医・精神科専門医が統合失調症の診療を行っています。
丁寧な問診を大切にしています
じっくりとお話を伺い、お一人おひとりに合った治療をご提案します。症状だけでなく、生活の困りごとやご不安にもじっくり耳を傾けます。ご本人のペースに合わせた治療計画を一緒に考えていきます。
通いやすい診療体制
夜間・土日も診療しているため、お仕事を続けながら通院いただけます。銀座駅から徒歩圏内の立地です。
費用について
保険診療で対応しています。自己負担の目安は、初診で約2,500〜3,000円、再診で約1,500円です。
※心理検査や血液検査を行った場合は、別途費用がかかる場合があります。
また、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すると、自己負担が1割に軽減されます。詳しくはお問い合わせください。
06ご家族・周囲の方へ
統合失調症のご家族を支えることは、大きな力になります。同時に、ご家族自身の負担にも目を向けることが大切です。
接し方のポイント
- 批判や説教を控え、短く具体的な声かけを心がけましょう。研究では、批判的な雰囲気(高EE)が再発リスクを高めることがわかっています。
- 「病気による変化」と「もともとの性格」を区別して考えましょう。意欲の低下や感情の乏しさは症状であり、本人の怠けではありません。
- 再発の早期サイン(睡眠の乱れ、イライラの増加、服薬の乱れなど)を一緒に把握し、気づいたら早めに主治医へ連絡しましょう。
- 家族心理教育への参加をお勧めします。病気の理解が深まり、再発予防にも効果があることが示されています。
ご家族自身のケアも大切です
介護する側が疲弊してしまうと、支え続けることが難しくなります。家族会や相談窓口を活用し、ご自身の休息も確保してください。
07よくあるご質問
生涯に発症する割合(生涯罹患リスク)は約0.7〜1%とされており、珍しい病気ではありません。10代後半から30代にかけて発症することが多いですが、中高年で発症する場合もあります。
WHOによれば、適切な治療を受けた方の約3人に1人は完全寛解に至ります。多くの方で症状の波は小さくなり、就学・就労・対人関係の回復が期待できます。「症状をなくす」ことより「生活の質を上げる」ことに焦点を当てた治療を行います。
再発予防のため、一定期間の服薬継続が推奨されます。研究では、服薬を中断すると1年以内の再発リスクが大幅に高まることがわかっています。薬の種類や量は、状態に応じて主治医と相談しながら調整していきます。
抗精神病薬には眠気や体重増加などの副作用が生じることがあります。副作用の出方は薬の種類や個人差によって異なります。つらい副作用がある場合は我慢せず主治医にお伝えください。薬の変更や量の調整で対応できることが多くあります。
「前駆期」と呼ばれる初期段階で治療を開始できると、予後が良くなる可能性があります。「何となく人に見られている気がする」「集中力が落ちた」「引きこもりがちになった」など、気になる変化があれば早めにご相談ください。
症状の程度によりますが、通院しながらお仕事を続けている方も多くいらっしゃいます。当院は夜間・土日も診療しており、通院の負担を軽減できます。必要に応じて診断書の発行や就労支援についてもご相談いただけます。
多くの場合、外来通院で治療を行うことができます。ただし、症状が重い場合や、ご本人やご家族の安全確保が必要な場合には、入院治療をお勧めすることがあります。その際は適切な医療機関をご紹介いたします。
批判や説教を控え、短く具体的な言葉で関わることが大切です。家族心理教育への参加が推奨されており、再発予防と介護負担の軽減に効果があります。再発の早期サインを把握し、異変に気づいたら主治医へ連絡する体制を整えておきましょう。
服薬の継続が最も重要です。加えて、睡眠の乱れやイライラの増加など、自分なりの「早期警戒サイン」を把握しておくことが役立ちます。サインが出たらできるだけ早く医療者に連絡することが大切です。規則正しい生活とストレス管理も再発予防の柱です。
音楽を聴く、テレビをつけるなどの「注意転換」が有効とされています。「これは症状だ」と自分に言い聞かせる方法(セルフトーク)や、散歩などの軽い身体活動も助けになります。ただし、これらはあくまで補助的な対処であり、薬物療法との併用が基本です。
08関連する疾患
関連コラム
- 統合失調症について
- 統合失調症の幻覚と妄想について
- 統合失調症の再発について
- 統合失調感情症(統合失調感情障害)について
- 妄想症(妄想性障害)について
- 体感幻覚について
- 無力妄想・敏感関係妄想について
- アカシジアについて
09参考文献
- DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(APA, 2013)
- WHO Fact Sheet: Schizophrenia(2022)
- NICE Rehabilitation and recovery for psychosis and related severe mental health conditions(NG248, 2024)
- 日本神経精神薬理学会「統合失調症薬物治療ガイドライン 2022」
- Firth J et al. Aerobic Exercise Improves Cognitive Functioning in People With Schizophrenia. Schizophr Bull. 2017;43(3):546-556.
※1 出典:WHO Fact Sheet: Schizophrenia(2022)


