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病気不安症・身体症状症(心気症・身体表現性障害)について

「検査では異常なしと言われたのに、どうしても安心できない」。頭痛があれば脳腫瘍を疑い、動悸があれば心臓病を疑う。病院を回っても不安が消えず、インターネットで病名を調べ続けてしまう。そんな状態が何か月も続いているなら、それは気の持ちようではなく、医学的に名前のついたこころの不調かもしれません。

病気不安症と身体症状症は、かつて心気症や身体表現性障害と呼ばれていた領域に位置づけられる疾患です。本人にとって痛みや違和感、病気への恐怖はまぎれもない現実です。それにもかかわらず、周囲からは「考えすぎ」と受け止められやすく、孤立感を深めてしまう方が少なくありません。

このページでは、病気不安症と身体症状症について、症状の現れ方、背景にある仕組み、治療の基本、ご家族の関わり方までを順を追って解説します。

  • 検査で異常がないと言われても、病気への不安が消えない
  • 体の一部を何度も自分で触って確認してしまう
  • 健康番組や病気の報道を見ると強く動揺する
  • 病名をインターネットで調べ続けてしまう
  • 家族に「大丈夫かな」と何度も確認してしまう

病気不安症・身体症状症(心気症・身体表現性障害)とは

病気不安症と身体症状症は、国際的な診断基準の見直しに伴い、かつての心気症身体表現性障害という概念から整理し直された疾患名です。どちらも、体の感覚や病気への不安に心がとらわれ、生活に支障が出ている状態を指します。

大きな特徴は、体の症状があるかどうかよりも、症状や健康への反応が過剰になっている点にあります。実際の体の病気の有無とは別に、心の反応そのものが苦しさを生んでいると考えます。

病気不安症・身体症状症は「仮病」ではありません。本人が感じている痛みや恐怖は本物であり、意思の力で消そうとしてもうまくいかないことが多い、医学的な支援の対象となるこころの不調です。

どのような症状がみられるのか

症状の現れ方は人によって幅があります。ここでは代表的なパターンを、体の症状と行動面の両方から整理します。

身体面の症状

  • 慢性的な頭痛、腹痛、背中や関節の痛み
  • 動悸、息苦しさ、胸の違和感
  • めまい、ふらつき、耳鳴り
  • 胃もたれ、吐き気、下痢や便秘といった胃腸の不調
  • 全身のだるさ、強い疲労感

これらの症状は、実際の体の病気によるものの場合もあります。症状の有無ではなく、症状への反応の強さが診断の手がかりになります。

行動・心理面の特徴

  • 軽い頭痛を脳の重い病気と結びつけて考えてしまう
  • 救急外来や内科を繰り返し訪れる
  • ほくろ、リンパ節、脈拍などを何度も自己チェックする
  • 病名や症状をインターネットで延々と検索する
  • 家族や医師に「本当に大丈夫か」と繰り返し尋ねる
  • 検査で異常なしと言われても、数日で不安が戻ってくる

こうした確認の行動は、その場では不安をやわらげます。しかし長い目で見ると、「確認しないと安心できない」回路を脳に覚え込ませ、症状を慢性化させる一因になります。

身体症状症と病気不安症の違い

二つの疾患はよく似ていますが、中心にあるものが異なります。目安として整理します。

身体症状症の特徴

  • 痛み、疲労、胃腸症状など、実際の体の症状が続いている
  • 多くは6か月以上、症状が続いている
  • 症状への不安や時間・労力の費やし方が過剰
  • 体の病気が実際にあっても、それへの反応が過剰であれば対象になる

病気不安症の特徴

  • 体の症状はほとんどないか、ごく軽い
  • 「重い病気にかかっているのでは」というとらわれが中心
  • 健康に関する行動が、受診を繰り返すタイプ恐怖のため受診を避けるタイプに分かれる
  • この状態が6か月以上続いている

旧来の心気症のうち、体の症状が前面に出るものは身体症状症へ、病気への不安が前面に出るものは病気不安症へ整理されました。日本の臨床現場では心気症身体表現性障害という呼び方がいまも残りますが、指している中身はおおむねこの二つに対応します。

なぜ病気不安症・身体症状症が起きるのか

原因は一つではなく、いくつかの要因が重なり合って発症すると考えられています。

  • 身体的な要因: 体の感覚に気づきやすい体質、自律神経の過敏さ、不安やうつに関わる神経の働き
  • 心理的な要因: 完璧主義、悲観的な考え方、「体の変化=危険」とみなしやすい思考のくせ
  • 生育環境の要因: 幼少期の重い病気の経験、身近な人の病死、病気に神経質な家庭環境
  • 社会的な要因: 健康情報の氾濫、医療情報へのアクセスの容易さ、SNSでの闘病体験談の広がり

症状を維持する仕組みの中心にあるのが、「不安→確認行動→一時的な安心→不安の再燃」というループです。このループを少しずつゆるめていくことが、回復の鍵になります。

体の感覚が揺らぐこと自体は、健康な人にも日常的に起こります。動悸、軽い痛み、めまいは、疲れや緊張でも生じます。その揺らぎを「危険の合図」と解釈し続けることが、不安を大きくしてしまうのです。

関連する疾患

病気不安症・身体症状症は、ほかのこころの不調と重なって現れることがよくあります。両方を一緒に評価することで、治療の方向性が定まりやすくなります。下の疾患名はそれぞれ、より詳しい解説ページに進めます。

  • 不安症: 健康以外のさまざまな事柄にも不安が広がり、緊張が続きやすくなります。
  • 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込みや意欲の低下が加わると、体の不調を重く感じやすくなります。
  • 強迫症(強迫性障害): 繰り返しの確認行動という点で、似た仕組みを持つ疾患です。
  • パニック症: 動悸や息苦しさといった発作的な症状への恐怖が、病気への不安と結びつくことがあります。
  • 自律神経失調症: 動悸、めまい、胃腸症状など、体の不調の背景として語られることがあります。
  • 心身症: 心理的な要因が体の症状に影響している状態として関わります。

治療の基本

治療は、身体面の評価心理療法薬物療法を組み合わせて進めるのが基本です。症状の強さやご本人の希望に合わせて、無理のない順序で組み立てます。

1. 身体面の評価と情報の整理

最初に、体の病気の可能性を必要な範囲で確認します。そのうえで、これまでの検査結果を整理し、「どこまで調べ、どこから先は心の側の問題として扱うか」という見通しの枠組みを一緒に作ります。むやみな追加検査は、かえって不安を強めることがあるためです。

2. 心理療法

もっとも研究の積み重ねがあるのは、認知行動療法です。体の感覚を「危険のしるし」と受け取る思考のくせを見直し、確認や回避の行動を段階的にゆるめていきます。代表的な技法は次のとおりです。

  • 考え方の見直し: 「この動悸は心臓病だ」という自動的な考えの根拠と反証を書き出し、現実的な解釈に置き換える
  • 行動の練習: 不安を感じてもあえて検索や自己触診を控え、不安が自然にやわらぐ体験を重ねる
  • 行動実験: 「確認しなかったら本当に悪いことが起きるのか」を小さく試し、予想と現実のずれを確かめる

また、体の感覚や不安な考えを消そうとせずに観察するアプローチも役立ちます。マインドフルネスやアクセプタンスの考え方を取り入れた心理療法が用いられることがあります。

3. 薬物療法

不安やうつの要素が強いとき、SSRIと呼ばれる抗うつ薬が選択されることがあります。効果が現れるまで数週間かかること、自己判断で中止すると不安や不調が戻りやすいことに注意が必要です。処方や調整は、必ず主治医と相談しながら進めます。

薬は不安のボリュームを下げる土台、心理療法は不安との付き合い方を学ぶ場と考えると、それぞれの役割が整理しやすくなります。

家族や周囲の方へ

ご家族の関わり方は、回復の速度に大きく影響します。大切なのは、否定もしない、過剰な安心も与えすぎないという姿勢です。

  • 「気のせい」「考えすぎ」と切り捨てない。本人にとって苦痛は現実です
  • 「大丈夫かな」と何度も聞かれたとき、毎回強く保証しすぎないようにする
  • 代わりに「一緒に主治医に相談してみようか」と提案する
  • 受診や治療の継続を、静かに後押しする
  • 「検索を我慢できた」「確認を一回減らせた」といった小さな変化を言葉にして認める

安心の言葉を繰り返すこと自体が、結果として確認行動を強めてしまう場合があります。ご家族だけで抱えず、主治医と関わり方を相談していただくと、対応の方針が定まりやすくなります。

早めに相談したいサイン

次のような状態が続いているときは、こころの専門の医療機関に相談するタイミングかもしれません。

  • 複数の医療機関で異常なしと言われても、不安が消えない
  • 健康への不安のために、仕事や家事、人付き合いに支障が出ている
  • 症状の検索や自己チェックに1日1時間以上を費やしている
  • 逆に、怖さのあまり必要な受診を避けてしまっている
  • 気分の落ち込み、眠れなさ、食欲の低下が重なっている

気持ちがつらく、だれかに話を聞いてほしいときは、以下の相談窓口も利用できます。

  • よりそいホットライン: 0120-279-338(24時間、通話料無料)
  • いのちの電話: 0570-783-556

よくある質問

検査で異常がないのに、なぜこんなに苦しいのですか?

体の異常が見つからないことと、苦しくないことは別の話です。体の感覚に気づきやすい体質、脳の不安のスイッチの入りやすさ、これまでの経験などが重なって、症状と不安が大きく感じられることがあります。苦しさそのものが心の側の治療対象になりますので、「異常がないなら我慢するしかない」ということはありません。

ネットで病名を調べるのは、やめたほうがよいですか?

完全にやめる必要はありませんが、時間と回数の目安を決めておくことをおすすめします。検索は一時的に安心をもたらしますが、別の怖い情報に出会うと不安がぶり返します。「1日◯分まで」「信頼できる公的サイトだけ見る」と範囲を決めるだけでも、生活の負担は軽くなります。

薬を飲み始めたら、ずっと飲み続けることになりますか?

必ずしもそうとは限りません。症状が落ち着き、心理療法で不安への対処法が身についてきた段階で、主治医と相談しながら少しずつ調整していきます。自己判断で急にやめると不調が戻りやすいので、減らし方も一緒に決めていくことが大切です。

家族が病気不安症かもしれません。どう声をかければよいですか?

まずは「気のせい」と否定しないことが大切です。本人の苦しさを受け止めたうえで、「一緒に専門のところに相談してみようか」と提案してみてください。保証の言葉を繰り返すよりも、医療者と一緒に考える場を作ることが、結果として本人の安心につながります。

まとめ

病気不安症・身体症状症は、心と体の境界にある不調です。重要なのは、症状を軽く見ることでも、重い病気と決めつけることでもありません。不安そのものとの付き合い方を少しずつ変えていくことが、回復の道筋になります。

適切な治療とセルフケアを続けることで、不安に振り回される時間は確実に減らしていけます。一人で抱え込まず、信頼できる医療者に相談する一歩が、回復の出発点です。苦しさは本物です。その苦しさに、医療の言葉で向き合える場所があります。

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