銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

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食行動症または摂食症群 (6B8)

摂食症(摂食障害)について

食事と体型に強くとらわれる摂食障害のイメージ

「食べることが怖い」「食べては吐いてしまう」「体重のことが頭から離れない」。摂食障害(摂食症)の内側では、こうした思いが一日じゅう続いています。周囲から見れば、答えは簡単に思えます。ちゃんと食べればいい。食べすぎなければいい。本人も、頭ではそれを分かっています。それでも、できないのです。

摂食障害は、食事、体重、体型へのとらわれが強くなり、こころとからだの両方に大きな負担がかかる病気の総称です。よく知られているのは神経性やせ症(いわゆる拒食症)と神経性過食症(いわゆる過食症)です。ほかにも過食性障害回避・制限性食物摂取症、反芻症、異食症などが含まれます。思春期の女性に多いことで知られていますが、男性や中高年の方にも起こります。

なぜ、分かっていてもできないのでしょうか。摂食障害の内側で動いているのは、食欲ではないからです。「食べ方のくせ」でも「ダイエットの行きすぎ」でもありません。太ることへの強い恐怖。体型や体重で自分の価値が決まってしまう感覚。気持ちを言葉にしにくい苦しさ。人からどう見られるかへの強い不安。こうした思いが重なって、食行動の変化として表に出てきます。外からは「細いだけ」「食べすぎているだけ」に見えても、内側では次のようなことが起きています。

  • 食事量、カロリー、体重のことが一日じゅう頭から離れない
  • 特定の食品を極端に避け、食べられる範囲がどんどん狭くなる
  • 短時間に大量に食べてしまい、自分では止められないと感じる
  • 食べたあとに吐く、下剤や利尿薬を使う、長時間の運動を続ける
  • やせているのに、自分では「まだ太っている」と感じる
  • 疲れやすさ、冷え、便秘、立ちくらみ、月経不順や無月経がある
  • 食事の場を避けるうちに、人づきあいが減っていく
  • 食べたあとに、強い自己嫌悪や気分の落ち込みが押し寄せる

摂食障害は、「食欲の問題」ではなく、体型・体重が自己評価の中心を占めてしまう苦しさの病気です。意思の強さや家庭の育て方だけでは説明できません。こころとからだを一緒に支える必要があるため、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが大切です。

摂食症(摂食障害)とは

食欲の病気でないなら、何が中心にあるのでしょうか。症状の奥をたどっていくと、二つの感覚に行き着きます。体重や体型に対する過度なとらわれと、食べることを自分でうまく扱えない感覚です。表に出る形は、人によって大きく違います。食事を極端に減らす。食べたあとに吐く。下剤や利尿薬に頼る。反対に、短時間に大量に食べてしまう。気分の落ち込み、不安、イライラ、自己否定感、集中しづらさ、対人関係のしんどさが重なることもあります。

この病気には、症状が症状を強めていく性質があります。栄養状態が悪くなると、考え方の柔軟さが失われます。食べ物と体重のことが、いっそう頭から離れなくなります。そうして、とらわれはさらに固定されていきます。「意思が弱いから食べられない」「わがままだから食べすぎる」。そうした説明は、この悪循環の前では現実に追いつきません。摂食障害は、国際的な診断分類でも独立した病型として位置づけられている、こころの病気の一つです。

どのような種類があるのか

やせたくて食べられない人と、止められずに食べてしまう人。一見すると正反対です。けれども、多くの場合、根っこにあるものは共通しています。体型と体重が、自分の価値を測る物差しになってしまっていることです。その物差しが食行動にどう表れるかによって、いくつかの型に分けられます。

神経性やせ症(拒食症)のイメージ

神経性やせ症(拒食症)

神経性やせ症では、「太りたくない」「もっとやせなければならない」という思いが生活の中心を占めます。食事量を減らす。特定の食品を極端に避ける。長時間の運動を続ける。周囲が心配するほどやせても、本人の目にはそう映りません。自分ではまだ太っていると感じることがあるのです。食べたあとに吐いたり、下剤や利尿薬を使ったりする方もいて、やせ方は一通りではありません。

低栄養は、静かに全身へ広がります。疲れやすさ、立ちくらみ、冷え、便秘。月経不順や無月経、集中力の低下、抑うつ、不眠。神経性やせ症は、精神疾患のなかでも身体合併症による影響を受けやすい病気とされています。それだけに、早い段階で医療につながるほど、回復への道のりが広がります

神経性過食症(過食症)のイメージ

神経性過食症(過食症)

神経性過食症の中心にあるのは、短時間に大量の食べ物を食べてしまい、止められない感覚です。過食のあとには、太ることへの強い恐怖と自己嫌悪が押し寄せます。そこで、自分で吐く、下剤を使う、翌日絶食する、過剰に運動する。こうした埋め合わせ行動を繰り返すことが多くみられます。外見上は標準体重のことも多く、周囲からは気づかれにくい病気です。

身体への負担は、体重には表れないところに出ます。繰り返す嘔吐や下剤の使用は、歯のエナメル質や、のど・食道を傷めます。胃腸症状、顔のむくみ、電解質の異常、気分の落ち込みも起こりえます。「また食べてしまった」「また吐いてしまった」。その自己嫌悪をひとりで抱え、誰にも言えないまま、孤立が深まりやすいのも特徴です。

過食性障害(むちゃ食い症)

短時間に大量に食べる点は神経性過食症と同じですが、吐く・下剤を使うといった埋め合わせ行動を伴いません。そのぶん過食のあとには、強い罪悪感と恥ずかしさだけが残ります。体重が増えていく方が多くみられます。抑うつや不安を抱えながら、気分をまぎらわす手段が食べることに絞られていく。そんな経過をたどることもあります。

そのほかの摂食症

一方で、やせたい思いがないのに食べられない方もいます。代表的なのが回避・制限性食物摂取症です。においや食感への過敏さ、のどを通らない恐怖、食事への興味の薄さから、必要な栄養が摂れなくなります。やせたいわけではないのに、結果として体重が増えず、成長や健康に影響が及ぶことがあります。ほかに、食べ物でないものを繰り返し口にする異食症があります。食べたものを意思とは別に口へ戻してしまう反芻症も、摂食症の仲間として整理されています。

体への影響

気持ちの問題なら、整理がつくまで待ってもよいのではないか。そう考えたくなるかもしれません。ただ、摂食障害には、待つことが難しい事情があります。こころの病気であると同時に、身体の安全をおびやかす病気でもあるからです。低栄養や嘔吐、下剤・利尿薬の乱用が続くと、身体のさまざまな部分にダメージが積み重なります。

  • 循環器: 脈が遅くなる、立ちくらみ、失神、不整脈、血圧低下
  • 電解質・腎臓: 嘔吐や下剤使用による低カリウム血症、脱水、腎機能の低下
  • 内分泌・骨: 月経不順・無月経、骨量の減少、成長期では身長の伸びへの影響
  • 消化器: 胃の膨満感、便秘、胃酸逆流、のどや食道の荒れ
  • 口のまわり: 歯のエナメル質の損傷、むし歯、唾液腺の腫れ、顔のむくみ
  • 皮膚・四肢: 手の甲のすり傷(自己誘発嘔吐)、うぶ毛の増加、冷え、むくみ

とくに注意したいのが再栄養症候群です。極端な低体重の方が急に食事を再開すると、電解質やミネラルが急激に変動することがあります。重い合併症につながりうる状態です。回復しようとした矢先に、かえって危険が生じることになります。自己判断で一気に食事量を増やさず、医療機関で慎重に管理しながら進める必要があります。もう一つの落とし穴は、体重が保たれている場合です。「食べては吐く」を繰り返していても体重が変わらないと、身体的な危険は外から見えにくくなります。めまい、動悸、胸の違和感、吐血、強い腹痛、意識が遠のく感じがあるときは、急いで医療機関に相談してください。

自己評価と体型へのこだわりに悩むイメージ

なぜ摂食障害が起きるのか

体への影響を知ると、「なぜ、そこまでして」と感じるかもしれません。本人の意志の弱さを疑う方もいれば、家庭の育て方を悔やむご家族もいます。けれども、摂食障害はひとつの原因だけで起こるわけではありません。体質、こころの傾向、生活の環境、社会の空気が重なり合って、少しずつ食行動の偏りが形づくられていきます。原因を探すことは、自分や家族を責めるための作業ではありません。回復のために必要な支えを整理するための作業です。

心理的な背景

背景になりやすい傾向として、完璧主義、自己評価の低さ、不安の感じやすさが知られています。感情を言葉にする難しさや、傷つきやすさが重なることもあります。「やせていなければ自分には価値がない」「完璧でなければ受け入れてもらえない」。こうした思いが、症状を内側から支えていることがあります。さらにその奥に、言葉にしにくい孤独や怒り、無力感、過去のつらい体験が隠れていることも少なくありません。

社会・文化的な影響

とらわれは、本人の中だけで育つものではありません。「やせていることが美しい」「食事を我慢できるのは自己管理ができている証」。そんな空気が、周囲には当たり前のように流れています。SNS で目に入る体型の比較や、極端なダイエット情報も、体型への不安を強める方向に働きます。家庭や学校・職場の人間関係、進学や就職の重圧、いじめやハラスメントがきっかけになることもあります。

生物学的な要因

からだの側の条件もかかわります。もともとの体質、食欲や満腹感を調整する脳の働き、遺伝的な要素が影響すると考えられています。見落とされやすいのは、やせそのものの作用です。やせが進むと、脳がエネルギー不足になり、考えが体重と食事のことに固定されやすくなります。この状態では、本人の力だけで冷静に判断することが難しくなります。医療と栄養の支えが必要になるのは、このためです。

関連する疾患

原因が一つでないのと同じように、症状も単独では現れないことがあります。摂食障害は、ほかのこころの不調と重なりやすい病気です。片方だけを治療しようとしても、うまく進まないことがあります。両方を一緒に評価することが大切になります。下の疾患名は、それぞれ詳しい解説ページにつながります。

  • 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込みや自己否定感が強まると、食べ方が極端になったり、食事でつらさをまぎらわせたりすることが増えます。
  • 不安症: 強い不安や緊張を、食事の制限やコントロールで静めようとすることがあります。悪循環になりやすい組み合わせです。
  • 強迫症: カロリー計算や食事の順番、体重を測る回数へのこだわりが、強迫症状と重なる場合があります。
  • 心的外傷後ストレス症(PTSD): トラウマによるつらい記憶や感情を、食べる・吐く・食べないことで一時的にまぎらわしてしまうことがあります。
  • 神経発達症群(ADHD・ASD): 衝動性や感覚の過敏さ、こだわりの強さが、食行動に影響することがあります。
  • パーソナリティ症: 感情の波や自己イメージの揺れが大きいと、過食や自己誘発嘔吐、自傷が重なることがあります。
  • 依存症: アルコールや薬物への依存とは重なりやすく、つらさをしのぐ手段が入れ替わりながら続くことがあります。
  • 身体醜形症(醜形恐怖): 見た目の一部分への強いとらわれが体型への不安と重なり、苦しさが並行して強まることがあります。

治療の基本

治療の話に入るとき、多くの方が思い浮かべるのは体重の数字です。けれども、摂食障害の治療は、体重を戻せば終わりというものではありません。身体の安全を守ること食行動を整えること背景にある苦しさを一緒に扱うこと。この 3 つを並行して進めます。かかわるのは精神科だけではありません。内科、管理栄養士、必要に応じて歯科。多職種のチームで支えていく病気です。

1. 評価と安全の確保

最初に確かめるのは、いま身体にどれだけの負担がかかっているかです。体重と身長、脈拍、血圧を測り、採血で電解質や肝臓・腎臓の働きを調べます。月経や内分泌の状態も確認します。危険な低体重、低カリウム血症、循環器の不安定さ、重い脱水があるとき。強い自殺念慮があるとき。こうした場合は、入院治療が必要になることもあります。自己判断で我慢せず、精神科・心療内科・内科・小児科などに相談してください。

2. 栄養と身体の管理

食事の立て直しは、意外なほど慎重に進めます。理由は、先ほどの再栄養症候群です。低栄養が強い場合は、少量からゆっくり食事量を増やしていきます。管理栄養士と連携しながら、極端な制限や埋め合わせ行動を少しずつ減らします。身体に無理の少ない形で、食事を組み立て直していきます。歯のダメージへの対応、月経や骨の状態の経過観察、必要な内科治療も並行して行います。

3. 心理療法

食行動が整い始めても、体重や体型で自分を測る物差しは、すぐには消えません。その部分を受け持つのが心理療法です。国際的に広く用いられているのは、摂食障害に特化した認知行動療法です。体型や体重に偏った自己評価、完璧主義、感情の扱いにくさ。症状を維持している悪循環を、少しずつ見直していきます。思春期の神経性やせ症では、家族を中心にした家族ベースの治療(通称モーズレー法)が有効とされています。モーズレー病院で開発された方法で、家族が一時的に食事を支える役割を担います。併存する抑うつや不安には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが選ばれることがあります。薬物療法は、栄養と心理療法と組み合わせて使うのが基本です。

4. 家族支援とチーム作り

治療を続けるうえで、家族の位置づけは特別です。診察は月に数回でも、食卓は毎日やってくるからです。だからこそ、家族が病気の仕組みを理解し、食事を支える時期があってかまいません。そのぶん、家族自身も休息と相談の機会を持つことが大切です。本人と家族、医療者、学校や職場、必要に応じて支援機関がチームになることが、回復を後押しします。家族会や家族向けの心理教育は、孤立を防ぐ助けになります。

家族や周囲の方へ

食卓を挟んで、手つかずの皿の前で沈黙が続く。深夜のキッチンから物音がしても、声をかけられない。ご家族の毎日には、こうした場面が繰り返されているかもしれません。つい出てしまうのが、「ちゃんと食べればいい」「気にしすぎ」「わがまま」という言葉です。けれども、この言葉は本人をさらに追い詰めてしまいます。大切なのは、体型を評価することではなく、苦しさそのものに目を向けることです。

  • 体重や見た目を評価しない、比べない
  • 食べた量を責めない。無理に励ましすぎない
  • 心配していることは、落ち着いた言葉で伝える
  • ひとりで抱え込まず、医療機関や家族会、精神保健福祉センターにつなぐ
  • 自傷、強い希死念慮、極端な低体重、脱水があるときは早めに受診を促す

この距離感を保ち続けるのは、簡単なことではありません。家族も疲弊しやすい病気だからです。家族会や自助グループ、専門家による家族支援を利用することは、本人にとっても家族にとっても大きな助けになります。相談の窓口は、家族のためにも開かれています。摂食障害全国支援センターや、一部の都道府県にある摂食障害支援拠点病院では、家族だけで相談することができます。

早めに相談したいサイン

  • 急激に体重が減っている、または低体重が続いている
  • 食べたあとに吐く、下剤や利尿薬を使うことがやめられない
  • 脈が遅い、ふらつく、失神した、脱水がある
  • 月経が止まった、生理不順が続いている
  • 歯のしみ、顔のむくみ、手の甲のすり傷などがある
  • 学校、仕事、人づきあいに明らかな支障が出ている
  • 抑うつ、自傷、自殺念慮がある

こうしたサインが重なっているときは、我慢せずに精神科・心療内科・内科・小児科などに相談してください。摂食障害は、早く医療や支援につながるほど回復の選択肢が広がる病気です。「消えてしまいたい」「もう限界」という気持ちが強いときは、受診を待たず、いのちの電話(0570-783-556・毎日10時〜22時/フリーダイヤル 0120-783-556・毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌日8時)やよりそいホットライン(0120-279-338)にご連絡ください。

よくある質問

拒食症と過食症は別の病気ですか?

診断名としては別ですが、境目は思うほど固定されていません。経過のなかで、神経性やせ症から神経性過食症へ移る方がいます。神経性過食症から過食性障害へ変わっていく方もいます。どの段階でも共通しているのは、体型・体重への過度なとらわれと、自己評価の傷つきが背景にあることです。

家で様子を見てもよいでしょうか?

状況によります。急激な体重減少、ふらつきや失神、脈が遅い、月経が止まっている、嘔吐や下剤使用がある、希死念慮がある。こうした場合は、家で様子を見ずに早めに受診してください。摂食障害は、こころの病気であると同時に、身体の安全にかかわる病気だからです。

本人が受診を拒むときはどうすればよいですか?

ご家族だけで相談を始めることができます。精神科や心療内科のほか、保健所、精神保健福祉センター、摂食障害の支援拠点医療機関が窓口になります。本人に受診を勧めるときは、体重や見た目の話から入らないほうがよいことがあります。「眠れているか」「疲れやすくないか」「つらいと感じていないか」。本人の体験に寄り添った伝え方のほうが、届きやすいことがあります。

男性や中高年でも摂食障害になりますか?

はい、あります。思春期の女性に多いことが知られていますが、男性の方、中高年の方にもみられます。スポーツや体型管理を必要とする職業の方も同様です。周囲の理解が得られにくく、相談が遅れやすい立場でもあります。気になるサインがあれば、年齢や性別にかかわらず早めに専門家に相談してください。

まとめ

「ちゃんと食べればいい」。その一言で解決しないのは、摂食障害が食べ方だけの問題ではないからです。体型や体重への強いとらわれ、感情の扱いにくさ、孤独感が絡み合って続いていきます。回復は一直線ではありません。それでも、症状の背景にある苦しさを理解し、体重や体型だけで自分の価値を決めない練習を重ねることはできます。支援を受けながら、少しずつ生活を取り戻していく道があります。「やせていなければ認められない」「食べた自分には価値がない」。その思いが強まっているときこそ、ひとりで耐えず、早めに専門家へ相談してください。

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