銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

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精神医学

自立支援医療について

精神科や心療内科への通院は、年単位で続くことが少なくありません。そのなかで多くの患者さんが、「医療費の負担がつらくて治療を続けにくい」という思いを抱えておられます。こころの回復は、ゆっくりとした時間の積み重ねで進むものです。通院も服薬も長期にわたるのが一般的で、経済的な不安は治療を続ける力を弱めてしまうことがあります。

こうした負担をやわらげるために用意されているのが、自立支援医療という公的な制度です。障害者総合支援法にもとづき、2006年4月から運用されています。精神科の通院で使う「精神通院医療」のほか、「更生医療」「育成医療」の3つの種類があります。

通常は医療保険で3割の自己負担がかかるところ、この制度の対象になると窓口の自己負担が原則1割に軽くなります。さらに、世帯の所得に応じて、ひと月あたりの自己負担上限額も決まります。本記事では、対象となる方、自己負担の仕組み、申請の流れを、患者さんとご家族の目線から整理します。

  • 精神科・心療内科への通院が続く方が使える公的な医療費の助成制度
  • 窓口の自己負担が3割から原則1割に軽減される
  • 世帯の所得に応じて、ひと月の自己負担上限額が決まる
  • 受給者証の有効期間は原則1年で、更新の手続きが必要

自立支援医療とは

自立支援医療は、心身の障害を取り除いたり軽くしたりするための医療費について、患者さんの自己負担を軽くする公費負担医療制度です。障害者総合支援法にもとづく制度で、精神通院医療・更生医療・育成医療の3つを一つにまとめたものです。

以前は、精神科通院の負担軽減は「精神通院医療費公費負担制度」(通称32条)と呼ばれていました。身体障害の治療は「更生医療」、お子さんの治療は「育成医療」として、それぞれ別々に運用されていました。2006年4月から、これらが自立支援医療という共通の枠組みに整理されています。

自立支援医療は「障害者手帳がないと使えない制度」ではありません。精神通院医療の場合、精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、対象となる疾患で継続的に通院していれば申請できます。

自立支援医療の3つの種類

自立支援医療は、対象となる方や治療の目的によって、次の3つに分かれます。精神科・心療内科の通院で利用されるのは、このうち「精神通院医療」です。

精神通院医療

精神保健福祉法第5条にあげられた精神疾患をお持ちの方のうち、通院による精神医療を継続的に必要とする方が対象です。対象となる疾患は幅広く、代表的なものには統合失調症、抑うつ症(うつ病)、双極症(躁うつ病)があります。ほかにも、てんかん、認知症などの脳機能障害、依存症、不安症、PTSDなどが含まれます。

給付の対象となるのは、外来診療、外来での投薬、精神科デイケア、訪問看護などです。入院医療は対象外となります。

更生医療

身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方が対象です。障害を取り除いたり軽くしたりする手術などの治療で、確実に効果が見込める医療が対象となります。具体的には、心臓機能障害への弁置換術やペースメーカー埋込術があります。腎臓機能障害への人工透析や腎移植、免疫機能障害への抗HIV療法なども、この枠組みで受けられます。

育成医療

18歳未満のお子さんで、身体に障害があるか、現在の病気を放っておくと将来障害を残すと認められる場合が対象です。手術などの治療で確実に効果が見込めることが条件となります。

自己負担の仕組み

自立支援医療の認定を受けると、指定自立支援医療機関の窓口での負担が原則1割となります。加えて、世帯の所得区分と病気の状態に応じて、ひと月あたりの自己負担上限額が決まります。上限を超えた分は支払う必要がありません。

所得区分要件負担上限月額
生活保護生活保護世帯0円
低所得1市町村民税非課税世帯で本人収入が年80万9千円以下2,500円
低所得2市町村民税非課税世帯で本人収入が年80万9千円超5,000円
中間所得層市町村民税課税世帯で所得割が年23万5千円未満医療保険の自己負担限度額(重度かつ継続・育成医療は軽減あり)
一定所得以上市町村民税課税世帯で所得割が年23万5千円以上公費負担対象外(重度かつ継続は経過的特例あり)

「世帯」の考え方に注意

ここでいう「世帯」は、住民票上の世帯ではなく、同じ医療保険に加入しているご家族を指します。健康保険や共済組合の場合は、扶養関係にある方全員が同じ世帯として扱われます。国民健康保険の場合は、一緒に国保に加入している方全員が対象となります。

ご本人の所得が低くても、同じ医療保険に入っているご家族の所得が高ければ、上限額はご家族の所得で判定されます。ご自身の世帯区分は、自治体の窓口で確認できます。

「重度かつ継続」と経過的特例

高額な治療を長い期間続ける必要がある方については、「重度かつ継続(高額治療継続者)」として、別の枠で負担上限月額が設定されます。次のいずれかに当てはまる方が対象です。

  • 疾患による該当: 統合失調症、双極症(躁うつ病)、抑うつ症(うつ病)、てんかん、認知症などの脳機能障害、依存症など
  • 医師の判断による該当: 精神医療に3年以上の経験を持つ医師が、計画的・集中的・継続的な通院医療が必要と判断した方
  • 医療保険の高額療養費「多数該当」に当てはまる方

「重度かつ継続」に該当する場合、中間所得層1(所得割3万3千円未満)は月額5,000円が上限となります。中間所得層2(所得割3万3千円以上23万5千円未満)は月額10,000円が上限です。

経過的特例(令和9年3月31日まで延長)

次の対象者については、もともと令和6年3月31日までとされていた経過的特例が、令和9年(2027年)3月31日まで延長されました。

  • 「重度かつ継続」の一定所得以上: 市町村民税所得割23万5千円以上で「重度かつ継続」に当てはまる方は、自立支援医療の対象となり、自己負担上限額は月額20,000円
  • 育成医療の中間所得層1(所得割3万3千円未満): 上限月額5,000円
  • 育成医療の中間所得層2(所得割3万3千円以上23万5千円未満): 上限月額10,000円

申請方法

申請の窓口は、お住まいの市区町村の担当課です。名称は自治体により異なり、障害福祉課、保健福祉課、精神保健福祉担当課などと呼ばれています。

主な必要書類

  • 支給認定申請書(窓口で配布されます)
  • 指定自立支援医療機関の医師による診断書(意見書)
  • 世帯の所得状況が確認できる書類(課税証明書、非課税証明書など)
  • 医療保険の被保険者証の写し
  • マイナンバーがわかるもの(本人・同一世帯員分)および本人確認書類
  • 更新や再交付の場合は、現在の自立支援医療受給者証

精神障害者保健福祉手帳の新規申請や更新と同時に行う場合は、手帳用の診断書を添えることで、自立支援医療の申請を兼ねることもできます。

受給者証の利用と有効期限

認定されると、「自立支援医療受給者証」「自己負担上限額管理票」が交付されます。受診や調剤のたびに、保険証と合わせて必ず両方を窓口に提示してください。提示しなかった場合、後からの差額払い戻しは原則としてできません。

  • 利用できるのは、受給者証に記載された指定自立支援医療機関(病院・診療所・薬局・訪問看護事業所)に限られます
  • 原則として、病院1か所・薬局2か所・訪問看護ステーション1か所をあらかじめ登録します
  • 有効期間は原則1年間で、続けて利用するには更新の手続きが必要です
  • 更新は、満了日の3か月前から申請できます
  • 申請日より前にさかのぼっての払い戻しはできません。通院が長引きそうなときは、早めの申請が大切です

対象外となる費用

自立支援医療を使っても、次の費用は制度の対象外となります。あらかじめ知っておくと安心です。

  • 入院にかかる医療費(精神通院医療の場合)
  • 医療保険が適用されない治療や投薬
  • 診断書料や文書料
  • 受給者証に記載のない医療機関や薬局での費用
  • 対象となる疾患と直接関係のない医療(たとえば、更生医療の対象であるHIV感染症の方が受ける、関係のない歯科治療など)

関連する疾患

精神通院医療は、継続的な通院治療を必要とするさまざまなこころの不調に使うことができます。下の疾患名からは、それぞれ詳しい解説ページに進めます。

  • 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込みや意欲の低下が続き、長期の通院と薬物療法が必要になることが多い疾患です。
  • 双極症(躁うつ病): 気分の波と向き合いながら、安定した状態を保つために継続的な治療を要します。
  • 統合失調症: 長期にわたる服薬と通院が回復の土台となり、重度かつ継続の対象にもなります。
  • 不安症: 強い不安や緊張が続くなかで、服薬と心理療法を組み合わせた治療が有効です。
  • パニック症: 予期しない強い発作への対処として、継続的な通院治療が行われます。
  • 強迫症(強迫性障害): とらわれと儀式的な行動への治療は、一定の期間をかけて進めます。
  • PTSD: 過去のつらい出来事の影響が心身に続く状態で、専門的な治療を継続します。
  • 依存症: 物質や行動への依存からの回復には、通院と支援の継続が欠かせません。

家族や周囲の方へ

こころの不調を抱えるご本人にとって、毎月の医療費は小さくない心配事です。「治療を中断したくないけれど、家計が苦しい」という思いから、通院の間隔を延ばしたり、処方薬を減らしたりしてしまう方もおられます。治療の中断は、こころの回復にとって大きな痛手になります。

ご家族や身近な方は、自立支援医療という制度があることをご本人と共有し、申請の準備を一緒に進めていただけると大きな支えになります。書類を集めたり、役所の窓口まで同行したりするだけでも、ご本人の心理的なハードルはぐっと下がります。

よくある質問

精神障害者保健福祉手帳がなくても申請できますか?

はい、申請できます。自立支援医療(精神通院医療)は手帳の有無とは別の制度で、対象となる疾患で継続的に通院していれば利用できます。手帳と同時に申請することもできますので、通院先の主治医やソーシャルワーカーにご相談ください。

複数の医療機関や薬局で使えますか?

利用できるのは、受給者証に登録した医療機関・薬局・訪問看護ステーションに限られます。原則として、病院は1か所、薬局は2か所、訪問看護ステーションは1か所まで登録できます。登録先を変更したい場合は、自治体の窓口で変更手続きを行います。

職場や家族に知られずに利用できますか?

自立支援医療の情報が、職場に自動的に伝わることはありません。ただし、同じ健康保険に加入しているご家族の所得情報は、負担上限額の算定のために自治体が確認します。心配な点があれば、申請前に自治体の窓口でご相談いただくと安心です。

引っ越したら手続きはどうなりますか?

お住まいの市区町村が変わる場合は、転出先の自治体で改めて手続きが必要になります。転出前の自治体と転入先の自治体に、早めに相談しておくと、切れ目なく制度を利用しやすくなります。

まとめ

自立支援医療は、継続的な治療を必要とする方の経済的な負担を大きく軽くする制度です。精神科への通院、身体障害の改善手術、お子さんの治療など、長期にわたる治療を安心して続けるための土台になります。「治療費が心配で通院をためらう」状態は、回復にとって大きな障壁です。使える制度は早めに活用し、治療に専念できる環境を整えることが大切です。

制度の細かい運用は自治体により異なる部分もあります。まずはお住まいの市区町村の担当窓口、または通院先の医療機関のソーシャルワーカー・精神保健福祉士にご相談ください。当院でも、制度の利用についてのご質問を受け付けています。一人で抱え込まず、回復に向けて一緒に進めていきましょう。

参考文献

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