銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

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精神医学

障害年金について

精神疾患で長く療養を続けていると、「働けない時期の生活をどう支えるか」という不安が、回復そのものを重くしてしまうことがあります。障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に著しい支障が生じている方の生活を支える公的年金制度です。身体の病気だけでなく、うつ病・双極症(躁うつ病)・統合失調症・神経発達症・知的発達症などの精神疾患も、同じように認定の対象になります。

当院にも、「就労が続かず経済的に行き詰まっている」「休職が長引いて先の見通しが立たない」というご相談が寄せられます。障害年金は、こうした時期に治療を中断せず療養に専念するための土台になります。本記事では、対象となる疾患、支給の要件、等級判定の仕組み、2026年度の支給額、申請の流れを、患者さんとご家族の目線から整理します。

精神の障害は、レントゲンや数値で示しにくい特徴があります。そのため、主治医が作成する診断書の内容が、等級判定の結果を大きく左右します。日常生活のどこに、どの程度の困難があるかを、診察で丁寧にお伝えいただくことが大切です。

  • うつ病・双極症・統合失調症・神経発達症などの精神疾患が対象
  • 初診日の加入制度により「障害基礎年金」または「障害厚生年金」に分かれる
  • 支給には初診日・保険料納付・障害状態の3つの要件が必要
  • 等級は1級・2級・3級(厚生年金のみ)で、診断書の内容が判定を左右する
  • 就労していても受給できる場合があり、最大5年分の遡及も可能

障害年金(精神)とは

障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事に著しい支障が生じた方に、定期的に支給される公的年金です。加入していた年金制度によって、次の2種類に分かれます。

  • 障害基礎年金: 初診日に国民年金に加入していた方が対象で、1級・2級があります
  • 障害厚生年金: 初診日に厚生年金に加入していた方が対象で、1級・2級・3級および障害手当金(一時金)があります

精神疾患で障害年金を受給することは「働く意欲がない」「甘え」ではありません。療養に必要な期間を落ち着いて過ごすための、れっきとした社会制度です。

対象となる精神疾患の区分

障害認定基準において、精神の障害は次のように区分されています。

  • 統合失調症、統合失調症に関連する妄想性の状態
  • 気分の障害(抑うつ症・双極症など)
  • 器質性精神障害(高次脳機能障害、認知症、依存症に関連する精神症状など)
  • てんかん
  • 知的発達症
  • 神経発達症(自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、学習症など)

パーソナリティ症(旧称: 人格障害)や、不安症・適応反応症のような一般的な不安・ストレス関連の状態は、原則として認定の対象外です。ただし、重い精神病の病態を示している場合などは対象となることがあります。

支給を受けるための3つの要件

障害年金を受給するには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

初診日要件

その精神疾患について初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金の被保険者であることが必要です。初診日に加入していた制度で、受給できる年金の種類が決まります。初診日が古い場合は、受診状況等証明書で確認します。

保険料納付要件

原則として、初診日の前々月までの公的年金加入期間のうち、3分の2以上が保険料納付済または免除であることが必要です。特例として、初診日の前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たします。

障害状態要件

障害認定日(原則、初診日から1年6か月経過した日)またはそれ以降に、障害等級表に定める1級・2級・3級のいずれかに該当する状態であることが必要です。

等級と認定基準

精神の障害の程度は、原因・症状・治療経過・日常生活状況などを基に総合的に認定されます。レントゲンや検査数値で示しにくいため、医師の診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が極めて重要な判断材料となります。

等級状態の目安
1級日常生活の用を弁ずることができない程度。常時の援助が必要
2級日常生活が著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることが必要な程度
3級(厚生年金のみ)労働が著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることが必要な程度
障害手当金(厚生年金のみ)労働に制限を加えることが必要な程度の障害を残すもの(一時金)

等級判定ガイドライン

地域による認定のばらつきを是正するため、厚生労働省は2016年9月から「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を運用しています。診断書の「日常生活能力の判定」(4段階の平均値)と「日常生活能力の程度」(5段階)を組み合わせ、等級の目安を示す仕組みです。てんかんはガイドラインの対象外となります。

判定平均\程度(5)(4)(3)(2)(1)
3.5以上1級1級または2級
3.0以上3.5未満1級または2級2級2級
2.5以上3.0未満2級2級または3級
2.0以上2.5未満2級2級または3級3級または3級非該当
1.5以上2.0未満3級3級または3級非該当
1.5未満3級非該当3級非該当
障害基礎年金では「3級」を「2級非該当」と読み替えます。

2026年度(令和8年度)の支給額

2026年4月分(6月支給分)からの支給額の目安は次のとおりです。

区分月額の目安備考
障害基礎年金 1級約 88,260円2級の1.25倍
障害基礎年金 2級約 70,608円
障害厚生年金 1級基礎年金+報酬比例×1.25配偶者加給年金あり
障害厚生年金 2級基礎年金+報酬比例配偶者加給年金あり
障害厚生年金 3級報酬比例(最低保証額あり)厚生年金独自給付

お子さんがいる方には、子の加算(第1子・第2子は各年額243,800円、月換算で約20,300円、第3子以降は各年額81,300円、月換算で約6,775円)も該当者に支給されます。正確な金額や加算の有無は、お住まいの年金事務所でご確認ください。

申請の流れ

申請は次の手順で進みます。書類の種類が多いため、年金事務所での事前相談を早めに予約しておくと手続きがスムーズです。

  1. 初診日の特定(受診状況等証明書を取得)
  2. 年金事務所での事前相談(必要書類の確認)
  3. 診断書の作成依頼(精神の障害用・所定様式)
  4. 病歴・就労状況等申立書の作成(発症から現在までを時系列で記載)
  5. 請求書類の提出(年金事務所または市区町村役場)
  6. 審査・決定(おおむね3〜4か月)

精神疾患の場合、主治医の診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性が審査の要となります。発症から現在までの経過を時系列で整理し、仕事・家事・対人関係のどこに困難があるかを具体的にお伝えいただくことが大切です。

申請時のポイントと注意点

  • 診断書の記載内容が等級判定に直結するため、日常生活の困難さを主治医に正確にお伝えすることが重要です
  • 就労していても受給できる場合があります(特に障害者雇用・福祉的就労・短時間勤務など)
  • 遡及請求(障害認定日請求)により、最大5年分まで遡って受給できる可能性があります
  • 受給後も1〜5年ごとの更新(再認定)が原則です。永久固定となるのは全体の一部にとどまります
  • 不支給や等級が想定と異なる場合も、審査請求・再審査請求の手続きができます

書類の準備に不安がある方は、お住まいの年金事務所、市区町村の障害福祉窓口、または障害年金に詳しい社会保険労務士にご相談いただけます。

関連する疾患

障害年金(精神)の対象となる代表的な疾患には、次のものがあります。下の疾患名からは、それぞれ詳しい解説ページに進めます。

  • 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込みや意欲の低下により、長期にわたって就労や日常生活が難しくなることがあります。
  • 双極症(躁うつ病): 気分の波が繰り返され、安定した生活や勤務が困難になる時期に該当します。
  • 統合失調症: 幻覚・妄想や陰性症状により、日常生活や対人関係に著しい制限が生じる代表的な疾患です。
  • 神経発達症(ADHD): 不注意・多動・衝動性の特性が強く、生活や就労への影響が大きい場合に対象となることがあります。
  • 不安症: 一般的な不安の状態は原則対象外ですが、重い症状で就労や日常生活に著しい支障がある場合などに該当することがあります。
  • 依存症: アルコール等による精神症状が残り、日常生活に制限が生じている場合に対象となることがあります。

家族や周囲の方へ

精神疾患は、ご本人にとって障害の程度を言葉で説明することが難しい病気です。身のまわりのご家族や身近な方の目から見た様子は、診断書や病歴申立書を作成するうえで、貴重な情報となります。起床や食事、入浴、服薬の管理、金銭の管理、対人関係などで、ご本人がどこに困っておられるかを、主治医に一緒にお伝えいただけるとよいでしょう。

書類の郵送、年金事務所での待ち時間、混雑した窓口でのやり取りは、症状が重い時期のご本人にとって大きな負担です。付き添いや代理提出、コピーの整理など、できる範囲のサポートがあると、申請のハードルはぐっと下がります。

よくある質問

就労していると受給できませんか?

就労の有無だけで受給が決まるわけではありません。障害者雇用、短時間勤務、福祉的就労などで仕事を続けておられる場合も、日常生活や就労に著しい制限があれば、受給できる可能性があります。仕事内容や勤務状況、職場での配慮を、病歴申立書や診断書に具体的に記載することが大切です。

初診日の証明がとれないときはどうすればよいですか?

最初に受診した医療機関のカルテが保存期間を過ぎて廃棄されている場合でも、2番目の病院の記録、お薬手帳、診察券、家族の記憶などを組み合わせて初診日を示す方法があります。年金事務所にご相談いただくと、代替的な確認方法の案内を受けられます。

一度不支給になっても、再申請できますか?

はい、できます。決定に納得がいかない場合は、通知を受けた日から一定期間内であれば審査請求・再審査請求が可能です。また、状態が悪化した場合には、時期を改めて新しく申請することもできます。主治医や年金事務所、社会保険労務士にご相談ください。

障害者手帳がなくても申請できますか?

申請できます。障害年金と精神障害者保健福祉手帳は、審査する機関も基準も別の制度です。手帳を持っていなくても、要件を満たしていれば障害年金は受給できます。逆に、手帳を持っていることが障害年金の受給を保証するものでもありません。

まとめ

障害年金は、精神疾患により日常生活や就労に著しい支障が生じている方の生活を、長期にわたって支える大切な制度です。目に見えにくい障害ゆえに申請のハードルは高く感じられますが、診断書と病歴申立書の精度が結果を大きく左右します。不安を一人で抱え込まず、主治医、年金事務所、市区町村の窓口、障害年金に詳しい社会保険労務士などに、早めにご相談ください。

当院では、障害年金の診断書作成や、病歴・就労状況等申立書を整えるうえで役立つ情報提供に対応しています。おひとりで抱え込まず、回復に向けて一緒に進めていきましょう。本記事は2026年4月時点の制度・金額に基づきます。最新の情報は、日本年金機構または年金事務所でご確認ください。

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