銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

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精神医学

ADHD治療薬について

お薬の話を主治医から聞いたとき、「自分に合う薬はあるのか」「副作用は大丈夫か」と、不安や疑問が次々に浮かぶ方は少なくありません。神経発達症(ADHD)の薬物療法は、不注意・多動性・衝動性による困りごとをやわらげる助けになります。日常生活や仕事・学業を過ごしやすくするための、有力な選択肢のひとつです。

ご本人もご家族も、お薬への不安を感じるのは自然なことです。まずはお薬の性質を正しく知ることが、その不安をやわらげる第一歩になります。当院では、服薬を始める前の疑問や迷いを一緒に整理しながら、納得のいく治療方針を相談しています。

本記事では、日本で承認されているADHD治療薬4種類について解説します。作用のしくみ、効果、副作用、処方のルールを整理してお伝えします。主治医との対話をより実りあるものにするために、役立てていただければ幸いです。

  • 集中が続かず、仕事や学業でケアレスミスが積み重なっている
  • 時間の見積もりが苦手で、約束や締切を忘れがち
  • じっとしていられず、そわそわと落ち着かない
  • 思いついたまま発言や行動をして、あとから後悔することが多い
  • 工夫や環境調整だけでは追いつかず、薬物療法を検討し始めた

ADHD治療薬とは

ADHD治療薬は、脳内で情報を伝える神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)のはたらきを整えるお薬です。ADHDでは、こうした神経伝達のバランスが崩れやすいと考えられています。

必要なときに集中力が保てず、不要なときに注意がそれてしまう。こうした困りごとの背景には、脳の情報伝達のクセがあります。お薬はこのバランスを整え、本来の力を発揮しやすくするサポートとしてはたらきます。

ADHDは性格の問題やご本人の努力不足ではなく、脳のはたらき方の特性です。お薬はその特性を否定するものではなく、日常を過ごしやすくするための支援の一つと理解すると、取り入れやすくなります。

日本では、海外で使われている薬のうち4種類が保険診療で使用できます。大きく、神経を活性化する中枢神経刺激薬と、異なるしくみで作用する非中枢神経刺激薬の2つに分かれます。

日本で使える4つの治療薬

以下の4剤が、日本国内で保険適用となっているADHD治療薬です。それぞれに個性があり、合う・合わないにも個人差があります。

一般名商品名分類適応年齢(保険)
メチルフェニデート徐放錠コンサータ中枢神経刺激薬6歳以上〜成人
リスデキサンフェタミンビバンセ中枢神経刺激薬6歳以上18歳未満
アトモキセチンストラテラ非中枢神経刺激薬6歳以上〜成人
グアンファシンインチュニブ非中枢神経刺激薬6歳以上〜成人

コンサータ(メチルフェニデート徐放錠)

脳内のドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを抑え、シナプスでの濃度を高めることで、集中力の維持を助けます。

徐放製剤として設計されており、朝1回の服用で約12時間、ゆるやかに効果が続くのが特徴です。不注意や集中の困りごとに効果を感じやすいお薬です。

  • 効果の現れ方:服用後1〜2時間で実感しやすい
  • 得意な症状:不注意、集中の持続
  • 剤形:錠剤(18mg/27mg/36mg)
  • 用法:1日1回朝。午後の服用は不眠を招きやすいため避ける
  • 用量:18歳未満は1日54mgまで、18歳以上は1日72mgまで。18mg単位で少しずつ調整する
  • 適応:6歳以上の小児と成人の両方に保険適応あり(成人期ADHDは2013年に追加承認)
  • 注意点:割ったり噛み砕いたりせず、水で服用する

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)

ビバンセは、体内でゆっくりと活性成分に変換されるプロドラッグとして設計された刺激薬です。ドーパミンとノルアドレナリンの両方に作用し、効果の持続時間も比較的長めです。

  • 適応:6歳以上18歳未満の小児期のみが保険対象。4剤のうちビバンセだけが成人適応を持たない
  • 位置づけ:他のADHD治療薬で十分な効果が得られない場合に検討される
  • 剤形:カプセル(20mg/30mg)
  • 用法:1日1回朝。午後の服用は避ける
  • 用量:1日30mgから開始し、1日70mgを超えない
  • 特徴:プロドラッグ設計により、急な血中濃度上昇が起こりにくいとされる
  • 18歳以降:18歳未満で治療を開始し継続する場合は、定期的に有用性を再評価する

ストラテラ(アトモキセチン)

ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に抑える非刺激薬です。効き始めまでに時間はかかります。そのぶん、1日を通じて安定した作用が得られ、依存のリスクがほとんどないことが大きな長所です。

  • 効果の現れ方:服用開始から数週間〜2か月ほどかけて実感されやすい
  • 得意な症状:不注意、不安を伴うタイプのADHD
  • 剤形:カプセル・内用液。後発品では錠剤もあり、服薬が苦手な方にも選びやすい
  • 服用回数:18歳未満は1日2回、18歳以上は1日1〜2回
  • 用量:18歳未満は体重に応じて調整。18歳以上は1日40mgから開始し、維持量は1日80〜120mg
  • 適応:6歳以上の小児と成人の両方(成人期ADHDは2012年に追加承認)
  • 併存疾患:抑うつや不安を伴う方にも使いやすい

インチュニブ(グアンファシン)

インチュニブは、α2Aアドレナリン受容体という別のしくみに働きかけ、前頭前皮質での信号伝達を整える非刺激薬です。ほかの3剤とは作用のしかたが大きく異なります。

多動性・衝動性やイライラの軽減に効果を発揮しやすいのが特徴で、感情の高ぶりが目立つ方に選ばれることがあります。

  • 効果の現れ方:1〜2週間ほどで実感されやすい
  • 得意な症状:多動性・衝動性、感情の高ぶり、チックの併存
  • 剤形:徐放錠(1mg/3mg)
  • 服用回数:1日1回。服用時刻は体調や生活リズムに合わせて主治医と相談して決める
  • 用量:18歳未満は体重別に、18歳以上は1日2mgから開始し、維持量は1日4〜6mg(最大6mg)
  • 適応:6歳以上の小児と成人の両方(成人期ADHDは2019年に追加承認)
  • 注意点:血圧を下げ、脈を遅くする作用がある。急な中止は避け、医師の指示に従って漸減する

効果・持続時間の比較

4剤は、効き始めの早さ、効果が続く時間、得意とする症状が異なります。下の表は主な違いをまとめたものです。

項目コンサータビバンセストラテラインチュニブ
分類刺激薬刺激薬非刺激薬非刺激薬
効き始め1〜2時間1〜2時間数週間〜2か月1〜2週間
持続時間約12時間約12〜13時間終日終日
服用回数朝1回朝1回1日1〜2回1日1回
得意な症状不注意・集中不注意・集中不注意・不安多動・衝動性
依存のリスクあり(管理下)あり(管理下)ほぼなしほぼなし
休薬の可否可能可能原則不可原則不可

どのお薬が合うかは人それぞれです。症状のタイプや生活スタイル、併存するこころの不調によって、選び方は変わってきます。主治医と相談しながら、丁寧に調整していきます。

副作用と付き合い方

お薬ごとに出やすい副作用の傾向は異なります。はじめに知っておくことで、変化に気づきやすくなります。

中枢神経刺激薬(コンサータ・ビバンセ)で起こりやすいもの

  • 食欲不振、体重減少。昼間の食欲低下が目立ちやすい
  • 不眠、寝つきの悪さ
  • 頭痛、動悸、血圧の上昇
  • 口の渇き、吐き気
  • 不安やイライラが強まる場合があり、不安症があるときは慎重に判断する

非中枢神経刺激薬(ストラテラ・インチュニブ)で起こりやすいもの

  • 眠気、だるさ。インチュニブで出やすい
  • 吐き気、腹痛、便秘などの消化器症状。ストラテラで出やすい
  • 血圧の低下、めまい、立ちくらみ。インチュニブで出やすい
  • 口の渇き
  • 肝機能への影響。ストラテラではまれに報告されており、定期的な血液検査で確認する

副作用の多くは飲み始めや増量の直後に現れやすく、身体が慣れると軽くなることが少なくありません。つらい副作用を感じたときは自己判断で中止せず、主治医にご相談ください。

ADHD適正流通管理システムについて

コンサータとビバンセは、乱用や依存のリスクに備えるため、ADHD適正流通管理システムという仕組みで処方・調剤が厳格に管理されています。

  • 処方できるのは、関連学会への参加や症例経験などの要件を満たし、登録された医師のみ
  • 調剤できるのは、登録された薬局と調剤責任者のみ
  • 患者さんもご同意のうえで登録し、ID番号が記載された患者カードの発行を受ける
  • 診断の根拠を丁寧に確認するプロセスがあり、医療機関によっては生育歴や学校での様子を示す資料の提示を求められることがある
  • 受診や調剤のたびに、患者カードで登録情報を照合したうえで処方・交付が行われる

ストラテラとインチュニブは、登録のない医療機関・薬局でも処方・調剤を受けられます。

この仕組みは患者さんを疑うためのものではありません。必要な方に安全にお薬が届けられるための社会的な取り決めです。手続きは少し煩雑に感じられますが、安心して治療を続けるための大切なプロセスです。

関連する疾患

ADHDは、ほかのこころの不調と重なって現れることが少なくありません。お薬の選び方や治療の進め方にも影響するため、併存する状態の有無を一緒に評価することが大切です。

  • 神経発達症(ADHD):本記事のテーマである ADHD の全体像は、こちらで詳しく解説しています。
  • 抑うつ症(うつ病):うまくいかなさが長く続くことで、二次的に気分の落ち込みが強くなることがあります。
  • 不安症:失敗を繰り返すことへの不安や対人場面の緊張が強まり、不安症が併存するケースがあります。
  • 双極症(躁うつ病):気分の波が大きい方では、刺激薬を慎重に用いる必要があります。
  • 依存症:自己対処として飲酒や物質使用が続き、依存が重なる場合があります。
  • 自律神経失調症:睡眠リズムの乱れや身体症状が重なることがあり、全体的に整えていきます。

治療の基本

ADHDの治療は、お薬だけで完結するものではありません。環境の調整、心理的な支援、薬物療法の3つを組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。

1. 環境の調整と生活の工夫

困りごとを減らす工夫は、治療の土台になります。タスクを小さく分ける、予定を1つのカレンダーに集約する、机の上の情報量を減らすなど、特性に合う工夫を積み重ねていきます。

2. 心理療法

心理療法は、ADHDの特性と上手に付き合う方法を学ぶ助けになります。時間管理、先延ばしへの対処、対人関係のコツ、自己肯定感のサポートなど、日常の課題に即して進められます。

3. 薬物療法

薬物療法は、環境の工夫や心理的支援だけでは追いつかない場合の有力な選択肢です。本記事の4剤の中から、症状・年齢・併存症・生活スタイル・副作用への感受性を踏まえて、主治医と相談して選びます。

家族や周囲の方へ

ご家族の理解とサポートは、薬物療法の効果を支える大きな力になります。服薬の時間を一緒に確認する、副作用がないか様子を気にかける、「楽になった」を共に喜ぶ。こうした関わりが、ご本人の安心感につながります。

お薬の効果や副作用は、ご本人よりも周囲のほうが客観的に気づきやすいことがあります。気になる変化があれば、次の診察で一緒に医師へ伝えていただくと、治療の調整に役立ちます。

一方で、服薬の有無でご本人を評価したり、「薬を飲んだのにどうして」と責めたりすることは避けてください。お薬は万能ではありません。ご本人の努力を認めながら、一緒に歩んでいく姿勢が大切です。

早めに相談したいサイン

次のような状態が続いているときは、早めに医療機関にご相談ください。

  • 不注意や衝動性で、仕事・学業・日常生活にはっきりと支障が出ている
  • 自己流の工夫が追いつかず、消耗感や自信の低下が続いている
  • 気分の落ち込みや強い不安が重なり、眠れない日が続いている
  • 服薬中に強い副作用や気分の急な変化がみられる
  • 処方されていない薬を、自己判断で入手したいと考えている

よくある質問

市販薬でADHDを治療できますか?

いいえ。ADHD治療薬は市販されておらず、すべて医師の処方が必要です。ドラッグストアやインターネット通販で購入することはできません。海外からの個人輸入は、偽薬や健康被害のリスクが非常に高いため、絶対に避けてください。

薬を飲むと性格が変わってしまいますか?

治療薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えるはたらきを持つものです。人格そのものを変えるお薬ではありません。むしろ「本来の自分の力を発揮しやすくなった」と感じる方が多くいらっしゃいます。違和感があれば、主治医にご相談ください。

飲み忘れてしまったときは、どうすればよいですか?

お薬によって対応が異なります。刺激薬(コンサータ・ビバンセ)は午後以降に気づいた場合、その日は服用せず翌日から再開することが一般的です。ストラテラやインチュニブは血中濃度を一定に保つ必要があり、扱いが変わります。飲み忘れが続くときは、主治医や薬剤師にご相談ください。

大人になってからADHDと診断されました。どの薬を使えますか?

成人期ADHDに保険適応があるのは、コンサータ(2013年追加承認)・ストラテラ(2012年追加承認)・インチュニブ(2019年追加承認)の3剤です。ビバンセだけは小児期(6歳以上18歳未満)のみが適応で、成人には処方できません。具体的な選択は、症状の特徴や併存する不調、生活スタイル、副作用への感受性をふまえ、主治医と相談して決めていきます。

まとめ

日本で使えるADHD治療薬は、コンサータ・ビバンセ・ストラテラ・インチュニブの4剤です。効き方、持続時間、得意な症状、副作用、処方のルールは、それぞれ異なります。

どのお薬が最適かは、症状・年齢・併存症・生活スタイルによって一人ひとり変わります。効果の現れ方や副作用の出方にも個人差があるため、主治医との対話を重ねながら調整していきます。

薬物療法は治療の一部であり、環境の工夫や心理療法と組み合わせることで、より力を発揮します。自己判断で始めたり中止したりせず、専門医と相談しながら進めていきましょう。お薬は、あなたの生活を支える味方になります。

当院では、ADHDの治療や服薬についてのご相談を承っています。不安や疑問を一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。

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