
「怖いのに、家から出られない」「殴られても、自分が悪かったのかもしれないと思ってしまう」。DV(配偶者・パートナー暴力)の被害を受けている方から、たびたび聞く言葉です。周囲は「なぜ逃げないのか」と不思議がります。けれども被害の内側では、恐怖と自責が同時に膨らんでいきます。逃げられないのは、意思が弱いからではありません。
殴る、蹴るだけが暴力ではありません。怒鳴る、無視する、生活費を渡さない、連絡先を管理する、望まない性行為を迫る。こうした行為の一つひとつが、少しずつこころとからだを削っていきます。夫や恋人からのあらゆる暴力、性犯罪、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為。これらは重大な人権侵害です。なかでも女性に対する暴力は、今なお早急な対応が必要な課題として残っています。
「家のなかのことだから」「相手も辛そうだから」。そうやって我慢を続けた先に、眠れない、涙が止まらない、外に出られない、という不調が積み重なります。だからこそ、大切なことを最初にお伝えします。悪いのは加害者であって、あなたは悪くありません。我慢し続ける必要もありません。当院は、DV や性暴力の影響で生じたこころとからだの不調を診療します。あわせて、必要な支援窓口や保護命令制度へのご案内も行います。
- 相手の機嫌をうかがって、家のなかで気が休まらない
- 殴る・怒鳴る・物を壊すといった行動が繰り返される
- 生活費や口座を管理され、自由に使えない
- 望まない性行為を拒めない/避妊に協力してもらえない
- 家族や友人との連絡を制限される
- 眠れない、食べられない、めまい・頭痛が続く
一つでも当てはまるなら、相談してよいタイミングです。逃げるかどうかを、今すぐ決める必要はありません。「これは DV ではないか」と、一度立ち止まって考える。まずはそのために、相談窓口や医療機関を使ってください。
DV(配偶者・パートナー暴力)とは
では、どこからが DV なのでしょうか。籍を入れていない、同居していない、もう別れている。そうした事情で「相談してよいのか」と迷う方は少なくありません。DV とは、親密な関係にある相手への暴力の総称です。配偶者だけでなく、元配偶者や恋人からの行為も含みます。そして身体的な暴力、精神的な暴力、性的な暴力、経済的な暴力のすべてが対象です。籍や同居の有無にかかわらず、相談していただけます。ただし、あとで述べる保護命令の対象は、これより狭く決まっています。
配偶者暴力防止法(DV 防止法)は、2024 年 4 月 1 日に改正・施行されました。保護命令の前提は、身体への暴力か、害を加えると告げる脅迫を受けたことです。2024 年 4 月の改正では、この脅迫の範囲に自由、名誉、財産が加わりました。あわせて、心(精神)への重大な危害も要件に含まれるようになりました。「殴られていないから我慢するしかない」。脅迫を受けている場合、この考え方は当てはまりません。
DV は、どんな人にも、どの家庭にも起こりえます。学歴、収入、職業、年齢は関係ありません。「自分が至らないから」「相手を怒らせたから」と考えてしまう方は多くいます。それでも、相手を怖がらせる行為は、どんな事情があっても正当化されません。被害を受けている側の落ち度で起きている暴力は一つもありません。
さまざまな形の暴力と、同意の考え方
「うちの場合は、暴力と呼ぶほどではない気がする」。そう感じている方もいるでしょう。ただ、DV は殴る行為に限りません。身体、こころ、性、経済、社会関係のいずれでも起こります。多くの場合、複数の形が組み合わさって現れます。
- 身体的暴力: 殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつける、髪を引っ張る
- 精神的暴力: 怒鳴る、無視する、人格を否定する、長時間責め立てる
- 性的暴力: 同意のない性行為、避妊への非協力、性的な画像の撮影や流布の示唆
- 経済的暴力: 生活費を渡さない、カードや通帳を取り上げる、働くことを禁じる
- 社会的隔離: 友人や家族との交流を制限する、連絡先や位置情報を監視する
一つひとつは、「よくあるけんか」に見えるかもしれません。組み合わさって続くと、様子が変わります。財布を握られ、友人と会えず、機嫌をうかがう毎日になる。そのときになって、はじめて暴力だったと気づく方も少なくありません。

性についても、同じです。あなたの「からだとこころ」はあなた自身のものです。いつ、どこで、誰と、どのような性的関係を持つか。それは、あなた自身が決めることです。相手との関係が対等でない場合、同意があったことにはなりません。「嫌だ」と言いにくい状況で行われた場合も同じです。ある行為に同意したからといって、別の行為にも同意したことにはなりません。

同意なき性行為は「性暴力」であり、重大な人権侵害です。着替えやトイレ、入浴をのぞかれた。体を触られた。望まないキスや性行為をさせられた。避妊に協力してもらえなかった。お酒や薬を使って性行為をされた。裸の写真や動画を撮られた。SNS で知り合った相手から被害を受けた。これらはすべて、性暴力に当たります。
性暴力は、年齢や性別、時間や場所を問わず起こります。「知らない人から突然」という印象があるかもしれません。実際には、加害者の約 8 割は顔見知りであるとされています。友人や夫婦、恋人といった親密な関係のなかでも起こりえます。「家族のことだから」「恋人のすることだから」。そう割り切る必要は、まったくありません。
こころとからだに起こる不調
被害が続くなかで、「眠れないのは気のせいだろうか」と感じている方もいるでしょう。気のせいではありません。DV や性暴力の影響は、外から見える傷だけではないのです。恐怖にさらされ続けた経験は、さまざまな精神的、身体的な不調として現れます。被害を受けた方には、次のような症状がしばしば見られます。
- 心的外傷後ストレス症(PTSD): 突然フラッシュバックが起こる、悪夢、強い警戒、気持ちの麻痺
- 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込み、意欲低下、不眠、食欲不振、自責感
- 適応反応症: 強いストレスに対する不安・抑うつ・行動の乱れ
- 不安症: 動悸、息苦しさ、外出への恐怖、からだが張りつめて休まらない
- 身体化症状: 頭痛、めまい、吐き気、慢性的な痛み、自律神経の乱れ
これらは、性格が弱いから現れる症状ではありません。強い恐怖や無力感を繰り返し体験したことに対する、こころとからだの正直な反応です。だからこそ、医療で扱える部分が多くあります。通院の記録や診断書は、あとで述べる保護命令の申立てでも役立ちます。職場や行政への相談でも、重要な役割を果たします。
DV チェックリスト(日常生活編)
「では、自分の場合はどうなのだろうか」。それを一人で判断するのは難しいものです。以下は、ご自身や身近な方の状況を整理する手がかりになるチェックリストです。該当する項目が4 つ以上あれば、DV の可能性を考えて相談することをおすすめします。

| 日常生活におけるチェックリスト | × | 〇 | |
| 1 | 経済問題(生活の困窮、無職、借金、賭博など) | 0 | 1 |
| 2 | 不定愁訴(頭痛・めまい・吐気など)・抑うつ症状(不眠・不安・意欲低下など) | 0 | 1 |
| 3 | 躊躇している(帰宅をしぶり、相談したそう) | 0 | 1 |
| 4 | 夫・恋人が離れようとしない | 0 | 1 |
| 5 | アルコール・タバコ・薬物依存など | 0 | 1 |
| 6 | 落ち着かない、イライラ・ピリピリ | 0 | 1 |
| 7 | 視線が合わない、表情に乏しい、応答が曖昧など | 0 | 1 |
| 8 | 生活リズムの乱れ | 0 | 1 |
| 9 | 子どもの発育・発達の遅れ、不登校・非行など | 0 | 1 |
| 10 | 子どもへ乱暴、無関心 | 0 | 1 |
| 11 | 本人・子どもに不自然な傷跡 | 0 | 1 |
| 12 | 夫・恋人からの DV 被害・申告 | 0 | 1 |
このチェックリストは診療経験に基づく目安であり、医学的な診断基準ではありません。点数にかかわらず、不安があれば相談してください。
DV チェックリスト(診療の場での見立て)
「診察室で、自分から DV の話を切り出せるだろうか」。そんな不安を持つ方もいるでしょう。実は、医療者の側にも見立ての手がかりがあります。以下は、受診の際に DV の可能性を見立てるために使われるチェックリストです。どんな様子がサインになるかを知っておくと、ご自身の状況を客観的に捉える助けになります。

| 診療の場におけるチェックリスト | × | 〇 | |
| 1 | 不自然な外傷(打撲・青あざ・すり傷・火傷など) | 0 | 1 |
| 2 | 外傷の説明を躊躇する、説明が曖昧・矛盾している | 0 | 1 |
| 3 | 夫・恋人の表情・機嫌をうかがう | 0 | 1 |
| 4 | 夫・恋人が離れようとしない | 0 | 1 |
| 5 | 躊躇している(帰宅をしぶり、相談したそう、入院したそう) | 0 | 1 |
| 6 | 落ち着かない、イライラ・ピリピリ | 0 | 1 |
| 7 | 視線が合わない、表情に乏しい、応答が曖昧など | 0 | 1 |
| 8 | 脱衣することへの抵抗(外傷を隠す) | 0 | 1 |
| 9 | 不定愁訴(頭痛・めまい・吐気など)・抑うつ症状(不眠・不安・意欲低下など) | 0 | 1 |
| 10 | 夫・恋人からの DV 被害・申告 | 0 | 1 |
| 11 | 子どもの問題・心配事 | 0 | 1 |
| 12 | 子どもへ乱暴、無関心 | 0 | 1 |
こちらも診療経験に基づく目安であり、医学的な診断基準ではありません。点数にかかわらず、不安があれば相談してください。
保護命令制度(2024 年 4 月改正)

「相談したところで、本当に守ってもらえるのだろうか」。そう疑う気持ちは自然なものです。その不安に応える仕組みの一つが、保護命令制度です。配偶者暴力防止法に基づくこの制度は、2024 年 4 月 1 日から新しくなりました。対象となる脅迫の範囲が広がったことが大きな変更点です。心(精神)への重大な危害も、要件に含まれるようになりました。
- 接近禁止命令等について、発令の対象が拡大
- 接近禁止命令等の有効期間が 6 か月から 1 年に伸びた
- 子への電話等禁止命令が新たに設けられた
- 保護命令違反への罰則が加重された(2 年以下の拘禁刑、200 万円以下の罰金)
この制度を使えるのは、どの範囲でしょうか。配偶者、事実婚の相手、生活の本拠を共にする交際相手からの被害が対象です。離婚や関係の解消のあとも、引き続き被害を受けている場合を含みます。同居していない交際相手からの被害は、保護命令の対象になりません。その場合はストーカー規制法などによる対応があります。いずれの場合も、警察や配偶者暴力相談支援センターにご相談ください。
保護命令の種類

保護命令は、地方裁判所が被害者の申立てを受けて出す命令です。加害側の配偶者に対して、一定の行為を禁止します。違反した者は、2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金となります。命令には、次の種類があります。
- 被害者への接近禁止命令
- 被害者への電話等禁止命令
- 被害者と同居している未成年の子への接近禁止命令
- 被害者と同居している未成年の子への電話等禁止命令
- 被害者の親族等への接近禁止命令
- 退去等命令
期間も決まっています。接近禁止命令とこれに伴う命令は 1 年間です。退去等命令は 2 か月間です。住居の所有者または賃借人が被害者のみで、申立てがあった場合は 6 か月間になります。子や親族等への命令は、被害者への接近禁止命令とあわせて出されます。子が 15 歳以上のときは、本人の同意が必要です。
対象となる「脅迫」

接近禁止命令などの対象となる脅迫とは、何でしょうか。法律では「生命・身体・自由・名誉または財産に対し害を加えると告げて行う脅迫」とされています。具体的にどの言動が該当するかは、個別の事案ごとに裁判所が判断します。例としては、次のようなものが挙げられます。
- 自由への脅迫: 部屋に閉じ込める、外出しようとすると怒鳴る、土下座を強要する、従わなければ仕事を辞めさせると言う。性的自由を害する告知も含まれる
- 名誉への脅迫: 性的な画像をばらまくと告げる、悪評をインターネットに流すと告げる
- 財産への脅迫: キャッシュカードや通帳を取り上げると告げる
医師の診断書の役割
この申立てには、医療が関わる場面があります。要件にある「重大な危害」とは、少なくとも通院による治療を要する程度の危害です。「心(精神)」に対する重大な危害には、うつ病、PTSD、適応反応症、不安症、身体化症状などが含まれます。配偶者からの身体的暴力または脅迫により、こうした症状で通院治療が必要になっている。そのうえで、さらなる危害を受ける恐れがある。このとき、「重大な危害を受ける恐れが大きい」と評価されます。
保護命令は、迅速な裁判(法第 13 条)によって進められます。心(精神)への重大な危害を理由に申し立てる場合は、通院治療を要する症状があることを示す必要があります。そのため、医師の診断書を添付することが求められます。当院では、DV による心身の不調を診療し、必要に応じて診断書を作成します。申立てに同行する支援者や、行政窓口との連携も行います。
関連する疾患
不調に名前がつくと、状況を説明しやすくなります。診断書や職場への説明にも、その名前が使われます。DV の被害は、以下のような精神疾患として現れることが多くあります。複数が重なっていることも珍しくありません。
- 心的外傷後ストレス症(PTSD): 出来事の再体験、悪夢、強い警戒、感情の麻痺などが続きます。
- 複雑性 PTSD: 長期にわたる被害のあとに、自己否定感・対人関係の困難・感情調整の難しさが加わります。
- 抑うつ症(うつ病): 気分の落ち込み、不眠、意欲低下、強い自責感が出てきます。
- 適応反応症: DV という強いストレス状況への反応として、不安・抑うつ・行動の乱れが生じます。
- 不安症: 動悸、息苦しさ、外出の困難などが続きます。
- 心身症: 頭痛・めまい・吐き気・慢性の痛みといった身体症状として出ることがあります。
- 不眠症: 眠れない、途中で目が覚める、悪夢で眠りが浅いといった形で現れます。
治療・相談の基本
症状のこと、法律のこと、生活のこと。課題が重なると、何から手をつければよいのか分からなくなります。被害を受けている方への支援では、三つの柱が同時に動きます。「安全の確保」「こころとからだのケア」「生活再建と法的支援」です。医療だけですべてを解決することはできません。それでも医療は、不調のケアと、公的支援につなぐ起点の役割を担います。
1. 安全の確保を最優先に
現に暴力が続いている場合、治療よりも先に、安全な場所の確保が必要です。頼れるのは、配偶者暴力相談支援センター、警察、各地の DV 相談窓口です。一時保護先の調整、子どもの安全、生活費の確保まで含めて相談に乗ってくれます。医療の側からも、必要に応じてこれらの窓口をご紹介します。
2. こころとからだのケア
不眠、不安、抑うつ、フラッシュバックなどには、症状に応じた薬物療法を用います。あわせて、負担の少ない形での心理療法を組み合わせます。とくに PTSD では、順序を大切にします。安全と日常の安定が整ってから、ご本人のペースでトラウマの整理に取り組みます。無理にトラウマの話を早い段階から引き出そうとすることはしません。
3. 診断書と法的支援の連携
保護命令の申立て、離婚調停、職場への説明。こうした場面では、医師の診断書が重要な役割を果たします。ご本人が希望される場合、診療経過に応じて診断書を作成します。弁護士、行政、支援団体との連携の一翼も担います。
家族や周囲の方へ
ご家族やご友人の様子から、「DV を受けているのではないか」と感じることがあります。すぐに引き離したくなるのが、自然な気持ちでしょう。けれども、無理に問い詰めたり、別れるよう迫ったりすると、かえってご本人が孤立することがあります。「あなたは悪くない」「困ったらいつでも話を聞く」と伝え続けることが、何よりの支えになります。
- 本人の話を否定せず、最後まで聞く
- 「逃げればいい」と急かさず、ご本人のペースを尊重する
- 相談窓口(配偶者暴力相談支援センター、DV 相談+など)の情報をそっと伝える
- 連絡が取れる手段を複数確保しておく(監視されている可能性があるため)
- 子どもにとって安全な居場所を一緒に考える
そばで見ているご家族自身も、強い不安や疲労を抱えることがあります。ご家族のほうが先に相談に来られても構いません。ご本人が動き出すまでの間、支える側が燃え尽きないよう、一緒に工夫していきます。
早めに相談したいサイン
次のようなサインがあれば、お一人で抱え込まずに相談してください。「まだ大丈夫」と我慢を続けるうちに、こころとからだの不調が長引くことが少なくありません。
- 相手の顔色をうかがい、家のなかでずっと張りつめている
- 眠れない、食べられない、めまいや頭痛が続く
- フラッシュバックや悪夢で日常生活が妨げられる
- 外に出るのが怖い、人と会いたくない
- 自分を責める気持ちが強く、死にたい気持ちがよぎる
- 子どもが落ち着かない、不登校・夜驚・退行などの変化がある
夜間や休日で医療機関につながりにくいときは、以下の窓口が利用できます。身の危険を感じる場合は、110 番(警察)をためらわずに利用してください。
- DV 相談+: 0120-279-889(24 時間対応)
- DV 相談ナビ: #8008(はれれば/最寄りの相談支援センターにつながる)
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター: #8891(はやくワンストップ)
- いのちの電話: 0570-783-556(毎日10時〜22時)/フリーダイヤル 0120-783-556(毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌日8時)
- よりそいホットライン: 0120-279-338
よくある質問
殴られていなくても DV になりますか?
はい、なります。怒鳴る、無視する、人格を否定する、生活費を渡さない、行動を監視する。望まない性行為を迫ることも含めて、すべて DV に含まれます。ただし、保護命令には条件があります。身体への暴力か、害を加えると告げる脅迫を受けたことが前提です。怒鳴る、無視するといった行為だけでは、対象になりません。それでも DV であることに変わりはなく、相談の対象です。「殴られていないから我慢するしかない」と思う必要はありません。
まだ別れる決心がつかなくても、相談していいですか?
もちろん問題ありません。相談したからといって、すぐに離婚や別居を決める必要はないのです。「これは DV だろうか」「いまの不調は DV が原因だろうか」。そこを整理するところから始められます。ご自身のペースで、選べる選択肢を一緒に増やしていきましょう。
保護命令を申し立てるには、必ず医師の診断書が必要ですか?
被害の内容によって異なります。身体への暴力や脅迫が中心の場合は、警察や相談支援センターの記録が中心の根拠になります。一方、心(精神)への重大な危害を理由に申し立てる場合は違います。通院治療を要する症状があることを示すために、医師の診断書が重要な役割を果たします。申立ての相談は、弁護士や配偶者暴力相談支援センターが先で構いません。そこからの案内で診断書を依頼する流れがスムーズです。
子どもへの影響が心配です
その心配は、もっともです。DV のある家庭で育つ子どもは、発達や情緒に影響が出ることが分かっています。直接の身体的暴力を受けていなくても、です。子どもの前で行われる DV は、面前 DV による心理的虐待とされています。落ち着かなさ、夜驚、退行、不登校、体の不調として現れることもあります。母子保健、児童相談、スクールカウンセラー。こうした子ども側の支援窓口も、早めに合わせて活用してください。
まとめ
「怖いのに、家から出られない」。冒頭の言葉に戻ります。DV は、配偶者や恋人という親密な関係のなかで起こる人権侵害です。殴る行為だけでなく、怒鳴る、無視する、生活費を握る、同意のない性行為。さまざまな形で、こころとからだを削っていきます。悪いのは加害者であって、あなたは悪くありません。いま生じている不調は、恐怖に耐え続けてきたことへの正直な反応です。そして 2024 年 4 月の法改正で、保護命令の対象となる脅迫の範囲が広がりました。心(精神)への重大な危害も、要件に含まれるようになりました。医療と行政、支援団体が役割分担をしながら、あなたを支えます。一人で抱え込まず、まずは一つの窓口につながってください。

