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DV加害者の人生航路

DV(ドメスティック・バイオレンス)加害者の人生経路は、単なる「怒りの爆発」や「力による支配」の問題ではなく、深層には傷ついた愛着・劣等感・無力感・ジェンダー観の歪みが潜んでいます。暴力という行動の背後には、未熟な感情処理と支配による安心追求という心理力動があります。

以下では、DV加害者の人生経路を7つの段階で詳述し、加害の意味や回復の道筋を明らかにします。


🔷 DV加害者の人生経路:7つのステージモデル


◉ 第1段階:愛着不全と暴力の内在化(形成期)

  • 幼少期における身体的・心理的虐待、家庭内暴力の目撃、支配的な親、無関心な養育
  • 「安心して感情を出す」「ありのまま受け止められる」体験が乏しい
  • 怒り・悲しみ・不安を“感じる”のではなく“攻撃”に置き換えるよう学習

👉【内的信念】「支配されるくらいなら、先に支配するしかない」


◉ 第2段階:劣等感と過剰な支配欲(潜伏期)

  • 自分に対する強い不信感(劣等感・無力感)と、他者に対する過剰な警戒心
  • 「支配=安心」「相手を従わせれば自分の価値が証明される」という信念形成
  • 表面的には優しさや配慮を見せるが、内面には関係への強い不安を抱える

👉【心の構造】「拒絶されたくない → 相手を完全にコントロールしたい」


◉ 第3段階:暴力の出現と「正当化」の始まり(逸脱期)

  • 言葉の暴力・無視・威圧・嫉妬・束縛 → やがて身体的暴力
  • 「お前のせいで怒らされた」「愛してるから言っている」などの責任転嫁愛情偽装
  • 加害後の謝罪と優しさ → 被害者の混乱・依存・自責を誘発する「サイクル構造」

👉【加害のサイクル】「支配 → 罪悪感 → 償い → 緊張 → 再び暴力」


◉ 第4段階:発覚と関係崩壊(露呈期)

  • 被害者の通報・家族の離反・離婚・職場での信用喪失
  • 初めて「DV」というラベルで自分の行動が社会的に否定される
  • 怒り・自己正当化・恨み・あるいはうつ的無力感へと揺れる

👉【典型反応】「自分はそんなに悪くない」「相手も悪い」「世間が騒ぎすぎ」


◉ 第5段階:動機への気づきと責任の自覚(洞察期)

  • 加害者プログラム・心理療法・内観療法などを通じて、自分の傷つきと加害性の両面に直面
  • 「怒りの裏にある感情(不安・孤独・劣等感)」の存在に気づき始める
  • 自分の加害が他者に与えた傷を、他者の視点から理解する練習

👉【内省】「暴力は“力”ではなく、感情を伝える術がなかった結果だった」


◉ 第6段階:関係性と感情調整の再学習(再建期)

  • 感情の言語化・怒りのコントロールスキル・健全なコミュニケーション訓練
  • 相手の同意・尊厳・境界を尊重する関係性の再構築
  • 「愛=支配」ではなく、「愛=共にいる自由」の感覚を獲得

👉【成熟の鍵】「コントロールしなくても、安心していられる関係がある」


◉ 第7段階:生き直しと語る力(統合期)

  • 加害の過去を否定せず、自らの変化の語り手として生き直す
  • 子どもや若年層、被害の再発防止に向けた支援者としての役割
  • 被害と加害、傷と責任の間で、自己を統合していく過程

👉【到達】「かつての自分のような人に、違う道があると伝えたい」


🔶 DV加害者の人生経路チャート(図式)

愛着不全 → 支配願望 → 加害行動 → 崩壊 → 洞察 → 再構築 → 統合
▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲
[傷つき][劣等感と怒り][暴力で安心][社会的破綻][感情の再発見][関係の再学習][責任ある語り手へ]

🔶 DV加害者に共通する心理的特徴

項目傾向
💢 感情調整の未熟さ怒りや不安を適切に処理できず、暴力に転化
👤 自己愛の脆弱さ相手に拒否されることへの過剰な恐怖
⚠ 境界のあいまいさ自他の区別が不明確、「お前は俺のもの」的認知
🎭 支配=安心の信念相手の自由が不安を呼ぶため、支配でバランスを取る
🧠 認知の歪み「これはしつけ」「相手のため」などの正当化

🔷 治療・支援の視点

アプローチ内容
💬 加害者プログラム(DVPP)認知修正・感情教育・共感性の育成
🧘 感情調整トレーニング怒り・羞恥・孤独と向き合うリラプス予防教育
🔄 内観療法自分が「してきたこと」「してもらったこと」を言語化し、他者性を回復
🎯 CBT・EMDRなどトラウマ・衝動性の背景にある歪みにアプローチ
🧭 ジェンダー教育男性優位的・家父長的価値観からの脱却支援

🔶 まとめ:「暴力の背後には、愛着の飢えがある」

DV加害者の人生は、暴力を通してしか「関わり」や「愛」を感じられなかったという、深い悲しみの物語でもあります。
回復には、
「怒りの奥にあるもの」を感じ・語り・関係性を学び直すプロセスが不可欠です。


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    1. ◉ 第1段階:愛着不全と暴力の内在化(形成期)
    2. ◉ 第2段階:劣等感と過剰な支配欲(潜伏期)
    3. ◉ 第3段階:暴力の出現と「正当化」の始まり(逸脱期)
    4. ◉ 第4段階:発覚と関係崩壊(露呈期)
    5. ◉ 第5段階:動機への気づきと責任の自覚(洞察期)
    6. ◉ 第6段階:関係性と感情調整の再学習(再建期)
    7. ◉ 第7段階:生き直しと語る力(統合期)
  • 🔶 DV加害者の人生経路チャート(図式)
  • 🔶 DV加害者に共通する心理的特徴
  • 🔷 治療・支援の視点
  • 🔶 まとめ:「暴力の背後には、愛着の飢えがある」
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