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10代の精神疾患


「10代」「思春期」それは「疾風怒濤(しっぷどとう)」と形容される時期です。すなわち、心身ともに子どもから大人へと成長りり最中「激しい風が吹き荒れ、大きな波が荒れ狂うような」体験を誰しも少なからず送るものです。身体的に、女性は10歳頃から月経がはじまり、男性は12歳頃から精通がはじまり、お互いに異性に関心を持ち始めます。心理的に「自己」または「自我」が確立し、今後の進路や職業などを熟慮・検討するようになります。

「疾風怒濤」とは、激しい風と荒れ狂う波の意。また、時代が激しく変化することの形容。「怒濤」とは荒れ狂い逆巻く波のこと。”Sturm und Drang”「シュトルム‐ウント‐ドラング」というドイツ語の訳語で、18世紀後半、ゲーテらを中心に展開された文学革新運動をいいます。絵画は “Abraham van Beijeren” による “River view” (1650-670).

「疾風怒濤」は自然に収まるものですが、そうでない場合もあります。嵐や波が続いたり、雨や雪が降り続いたりすることがあるのです。前者は「幻覚(げんかく)・妄想(もうそう)」、「躁(そう)」、後者は「鬱(うつ)」という精神症状に相当します。

「幻覚」とは見えるはずもないものが見えたり、聴こえるはずもないものが聴こえたりする症状です。「幻聴」という、聴こえるはずのないもない声が聴こえる症状が多く、特に自分の悪口を言われる「被害妄想」を伴う場合が最も多いです。「叫び」という絵画はまさにこの症状を表した作品です。

エドヴァルド・ムンク(ノルウェー)が1893年に制作したムンクの代名詞とも言える油彩絵画作品。極度にデフォルメされた独特のタッチで描かれた人物、血のように赤く染まったフィヨルドの夕景と不気味な形、赤い空に対比した暗い背景、遠近法を強調した秀逸な構図の作品である。この絵は、ムンクが感じた幻覚に基づいており、ムンクは日記にその時の体験を次のように記している。

「私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた」

つまり「叫び」はこの絵で描かれている人物が発しているのではなく、「自然を貫く果てしない叫び」に怖れおののいて耳を塞いでいる姿を描いたものであります。なお、ムンクがこの絵を発表した際、当時の評論家たちに酷評されたが、後に一転、高く評価されるようになる(Wikipediaより)。

「妄想」とは現実にありえない考えを抱き、他者がいくら訂正しようとしても、決して変わらない考え方を表した症状です。上記のような「自分は嫌がらせを受けている」という「被害妄想」が多いのですが、反対に「自分は皇室の血を引いている」といった「誇大妄想」を抱く場合も時々あります。

「幻覚・妄想」は「統合失調症(とうごうしっちょうしょう)」という精神疾患により起きる症状で、10代後半から20代前半が好発年齢(こうはつねんれい)、最も生じやすい年齢ですから、もしもそのような症状が本人・友人らに認められたら、速やかに精神科へ受診しましょう。

「ビューティフル・マインド」は「統合失調症」に罹患しながら、ノーベル経済学賞に輝いたジョン・ナッシュを描いた作品です。2001年、アカデミー作品賞。
1947年。ジョン・ナッシュはプリンストン大学院の数学科に入学する。彼は「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」という願いを果たすため、一人研究に没頭していくのだった。そんな彼の研究はついに実を結び、「ゲーム理論」という画期的な理論を発見する。やがて、その類いまれな頭脳を認められたジョンは、MITのウィーラー研究所と言われる軍事施設に採用され、愛する女性アリシアと結婚する。政府組織は敵国であるロシアの通信暗号解読を彼に強要し、その極秘任務の重圧に彼の精神は次第に追い詰められていく(Wikipediaより)。

「躁」は元気の良過ぎる状態、「鬱」は全く元気ない状態です。いずれも病的な状態で、問題を生じます。躁状態は一見、調子が良いようですが、次第に怒りっぽくなったり、お金遣いが荒くなったりして、後で悔やまれます。鬱状態は眠れなくなったり、食べられなくなったりして、仕事にも生活にも支障を生じます。政治家や芸能人など人並み外れた仕事をする方に、実は「躁鬱病」だったという方がいらっしゃるもので、晩年に「カミングアウト(公表・告白)」されることがあります。

10代・思春期の躁鬱病の特徴は「若年発病(じゃくねんはつびょう)」「遺伝素因・家族歴」が多く認められることです。すなわち両親や兄姉などに同病の方がいらっしゃることが少なくないということです。ご本人はご存知ないこともありますが、ご両親に後からうかがうと、そのような事実を確認することがあります。

「躁鬱・混合状態(躁と鬱が混じった状態)」を呈することも多く、「過眠(眠り過ぎ)・過食(食べ過ぎ)、易刺激的(些細な刺激でイライラ・ピリピリする)、鉛の様な怠さ」といった「非定型・鬱病」の病態を生じます。どうしてか女性に多く、「私は『うつ依存症』の女」という映画はこの病状を表現しています。

「私は『うつ依存症』の女」( 原題:Prozac Nation ) は、2001年に製作された、アメリカ・ドイツ合作映画。エリザベス・ワーツェル(en:Elizabeth Wurtzel)の自伝小説の映画化作品。原題のプロザック(Prozac)とはイーライリリー・アンド・カンパニーの抗うつ薬(SSRI)の商品名です。なお主人公の症状は、厳密に言えば非定型うつ病です。

音楽評論家エリザベス・ワーツェルのベストセラー自伝小説を映画化。情緒不安定で周囲を傷つけてばかり、うつ病のヒロインの日常と葛藤を描く。主演は、本作の共同制作者でもある『耳に残るは君の歌声』のクリスティーナ・リッチ。オスカー女優ジェシカ・ラングら演技派が脇を固め、ミュージシャンのルー・リードが本人役で出演。豪華出演陣をまとめ上げた、『インソムニア』オリジナル版で注目された新鋭エーリク・ショルビャルグ監督の手腕が光る。

母親の期待を一身に背負うリジー(クリスティーナ・リッチ)はハーバード大学に入学。友人や恋人もでき、文才も高く評価され全てが順調に行っていた。だが、突然文章が書けなくなり情緒不安定になった彼女は、うつの症状に悩まされていく(Wikipediaほか)。

最後に、「境界性パーソナリティ障害」を紹介しましょう。アメリカ精神医学会によりますと「対人関係、自己像、感情などの不安定および著しい衝動性を特徴とします。見捨てられることに対して敏感で、そうなるのをなりふりかまわず避けようとします。他者を過剰に理想化したかと思うと同じ人物をこき下ろすという具合に、その対人関係は極端で不安定です」と定義されています。幼少期からの親子関係や家庭環境に端を発しておりますが、10代・思春期から問題行動は顕在化します。治療は長期間のカウンセリングを要しますが、頑張りましょう。「17歳のカルテ」がお勧めです。

「17歳のカルテ」(原題:Girl, Interrupted)は、1999年のアメリカ合衆国の伝記青春映画。2000年に日本公開された。原作は1994年に出版されたスザンナ・ケイセンによる自伝。日本語訳は「思春期病棟の少女たち」(吉田利子訳/草思社/1994)。

ある日突然、薬物大量服用による自殺未遂を起こして精神科病院に収容されたスザンナ(ウィノナ・ライダー)。パーソナリティ障害という自覚が無く、その環境に馴染めなかったスザンナだが、病棟のボス的存在であるリサ(アンジェリーナ・ジョリー)の、精神疾患である事を誇るかのような態度に魅かれていく内に、精神科病院が自分の居場所と感じるようになっていく。

しかし退院した患者の近親姦を喝破してその患者を自殺に追い込むというリサの行動から、徐々に彼女の行動に疑問を持つようになって行く。だがその事でリサに疎んじられ、他の患者も全員リサに同調して彼女は孤立する。

やがてリサや他の患者との全面対決に至るが、その出来事によってスザンナは「リサはここ(精神科病院)でしか生きられないからこれだけ強気な行動に出られるのだ」と気づき、自分は社会復帰を目指さなくてはならないと決意し、退院したところで映画は幕を閉じる(Wikipedia)。

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