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精神医学

過食嘔吐の人生航路

過食嘔吐(Bulimia Nervosa/神経性過食症)は、「食べること」と「吐くこと」の反復を通して、感情や自己価値をコントロールしようとする行動嗜癖の一種です。
その人生航路は、「渇望 → 摂取 → 否認 → 浄化 → 罪悪感 → 再発」といった行動ループの連続と、自尊心・身体・関係性の問題が複雑に絡み合う心の物語です。


🔷 過食嘔吐の人生航路:7つのステージモデル


◉ 第1段階:無条件の承認の欠如と自己否定(形成期)

  • 幼少期に「完璧でなければ価値がない」「感情を出してはいけない」というメッセージを内在化
  • 親との関係において、「ありのままの自分」ではなく「役割を果たす自分」への報酬
  • 自己肯定感の土台が育たず、常に「もっと痩せなければ」「もっと頑張らなければ」と自分を追い詰める

👉【根底】「太ること=価値の喪失」「甘えること=弱さ」


◉ 第2段階:やせ願望と完璧主義の発動(潜在期)

  • 思春期以降、**社会的な美の基準(痩身・清潔・自制)**への同一化が始まる
  • 他者との比較・SNS・母親のダイエット言動などから「細さ=存在価値」へすり替わる
  • 完璧主義傾向と自己批判が強化され、食に対する「敵対的関係」が始まる

👉【信念】「痩せている私なら、愛されるはず」


◉ 第3段階:過食と嘔吐の出現(逸脱期)

  • ストレス・孤独・空虚感に耐えられず、一気に食べてしまう(過食)
  • その直後に「こんなに食べてしまった!」という強烈な罪悪感と自己嫌悪
  • 体重増加への恐怖 → 嘔吐、下剤、過剰運動などによる“浄化”行為

👉【心理サイクル】「満たされたい → 食べる → 怖くなる → 吐く → 自責」


◉ 第4段階:過食嘔吐ループの習慣化と依存化(固定期)

  • 食欲ではなく、「感情・不安・ストレス処理の手段」として機械的に過食嘔吐を繰り返す
  • 過食嘔吐は快楽ではなく、「何も感じなくする」「自分を罰する」ための行為へと変質
  • 社会関係の回避、孤立化、金銭的損失、身体症状(歯の損傷・電解質異常・嘔吐による喉の損傷)

👉【強化】「食べて吐くことでしか、気持ちを処理できない」


◉ 第5段階:限界と身体・精神の崩壊(底つき期)

  • 衰弱・生理停止・むくみ・胃腸障害・低カリウム血症などの身体症状
  • うつ・不安・自己嫌悪が極まり、「死にたい」「存在が苦しい」と感じる状態に
  • 周囲にバレたときの羞恥心・否認・攻撃性/もしくは「助けて」と言えるようになる

👉【訴え】「私は、自分で自分を壊している」


◉ 第6段階:援助との出会いと自己理解の始まり(気づき期)

  • 精神科・心療内科・摂食障害専門外来・心理療法との接触
  • 過食嘔吐を「やめる」のではなく、「その背景にある感情・痛み・渇望」に気づき始める
  • 自己理解(自己の役割・親との関係・完璧主義)と、“自分にやさしくする”という新しい体験

👉【変化の始まり】「私は悪くない、ただ苦しかっただけなんだ」


◉ 第7段階:行動・感情・関係性の再統合(回復期)

  • 食との関係性を“戦い”ではなく“対話”へと転換
  • 自分を罰するのではなく、“大切に扱う”生活設計(リズム・食事・つながり)
  • 自分の気持ちを人に伝える、助けを求める、つながることが安心につながるようになる

👉【回復の核】「私は“食べること”で、感じることを取り戻している」


🔶 過食嘔吐の人生経路チャート(図解)

自己否定 → やせ願望 → 食の暴走 → 浄化 → 自責 → 限界 → 回復
▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲
[無条件の承認欠如][細さ=価値][感情処理の失敗][嘔吐でリセット][私はダメだ][死にたいほど苦しい][本当の自分を大切に]

🔷 過食嘔吐に見られる心理的特徴

項目内容
💠 完璧主義「100点以外は失敗」思考/自分に極端に厳しい
💠 感情の抑圧不安・怒り・悲しみを言語化できず、“食”で麻痺させる
💠 自己否定感「私はダメ」「存在してはいけない」という感覚
💠 愛情渇望人とのつながりを求めつつ、怖れている(愛着不安)
💠 認知の歪み「太ったら人生終わり」「1g増えたら価値がない」

🔷 回復支援のポイント

アプローチ内容
🧠 認知行動療法(CBT-E)食行動の背景にある思考と感情を整理・再構築する
💬 感情調整トレーニング食べずに「感じる」力を育てる(怒り・孤独・寂しさ)
🧍‍♀️ 身体志向の療法ソマティック体験、マインドフルネス、ヨガなどで“身体を取り戻す”
👥 集団療法・対人関係療法他者と関わる中で「自分だけじゃない」と気づける場
🧾 食事再教育栄養士・臨床心理士による“怖くない食事”との付き合い方の学び

🔷 過食嘔吐は「食」の問題ではなく、「自己価値」の物語

  • 過食嘔吐は、単なる“食の乱れ”ではなく、「私は大切にされていい存在か?」という問いかけ
  • 「痩せていれば愛される」ではなく、**「そのままの自分がいていい」**と信じるまでの回復の旅
  • 行動をやめることよりも、なぜそうせざるを得なかったかに寄り添う支援が鍵

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    3. ◉ 第3段階:過食と嘔吐の出現(逸脱期)
    4. ◉ 第4段階:過食嘔吐ループの習慣化と依存化(固定期)
    5. ◉ 第5段階:限界と身体・精神の崩壊(底つき期)
    6. ◉ 第6段階:援助との出会いと自己理解の始まり(気づき期)
    7. ◉ 第7段階:行動・感情・関係性の再統合(回復期)
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  • 🔷 過食嘔吐に見られる心理的特徴
  • 🔷 回復支援のポイント
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