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精神医学

認知行動療法の作用機序

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)は、「認知(考え方)」と「行動(行い)」の変化を通して、感情や精神的健康を改善する心理療法です。抑うつ、不安、強迫性障害、PTSDなど多くの精神疾患に有効で、科学的根拠に基づいたエビデンスベースの治療法として世界的に広く用いられています。


🔷 認知行動療法の基本モデル:認知・感情・行動の関係

CBTでは、以下のように認知(思考)→感情→行動というサイクルが相互に影響し合っていると考えます:

出来事(状況)
  ↓
自動思考(瞬間的な解釈)
  ↓
感情(不安・怒り・悲しみ)
  ↓
行動(回避・攻撃・引きこもりなど)

CBTはこの連鎖を認識し、「不適応な認知・行動パターン」を再構成することで、精神的苦痛を軽減します。


🔬 認知行動療法の作用機序:6つの中核プロセス

① 自動思考の気づき(Awareness)

  • クライエントは、日常の困りごとや症状の背景にある**「自動思考」**に気づく。
  • 例:「人前で話す=失敗するに違いない」

🧠 神経基盤:前頭前野(認知的モニタリング)、帯状回(注意制御)


② 認知の再構成(Cognitive Restructuring)

  • 歪んだ認知(認知の歪み:全か無か思考、拡大解釈など)をより柔軟・現実的な考え方に修正する。
  • 例:「みんなに嫌われる」→「数人が私の発言を気に入らない可能性はある」

🧠 神経基盤:前頭前皮質の活性化、扁桃体の抑制


③ 行動実験(Behavioral Experiment)

  • 新しい考えに基づき、実際に試すことで認知を修正する。
  • 例:「挨拶してみて、どんな反応か観察してみよう」

✅ 成功体験が「恐れていたことは実際には起きなかった」と再学習に。


④ 行動活性化(Behavioral Activation)

  • 特にうつ病で用いられる。気分が改善するのを待つのではなく、先に行動することで、快の体験が増え、意欲・自尊心を取り戻す。

🧠 神経基盤:報酬系(側坐核・腹側被蓋野)が活性化


⑤ 曝露療法(Exposure)

  • 不安や恐怖を「避ける」のではなく、安全な環境で段階的に直面(曝露)することで、習慣化された回避行動を緩和する(恐怖条件づけの脱学習)。

例:高所恐怖 → 徐々に高い場所に近づく

🧠 神経基盤:扁桃体の過活動が減少、前頭葉による抑制が強化


⑥ 問題解決スキルの習得(Problem-Solving)

  • ストレスや対人関係の問題を構造的に分析し、具体的な行動プランを立てて実行・評価する能力を育てる。

🧠 神経科学からみたCBTの治療機序

脳部位CBTによる効果
前頭前皮質(PFC)認知の再構成・衝動抑制・注意制御の強化
扁桃体不安・恐怖への反応の低減
海馬記憶の文脈化・トラウマの再構成に関与
背外側前頭前皮質(DLPFC)ワーキングメモリ・論理的判断力の改善
デフォルトモードネットワーク(DMN)自動思考の過剰な自己内省活動の抑制

📘 臨床応用と対象疾患

対象疾患CBTの主な効果
うつ病思考のゆがみを修正し、行動を再活性化する
不安障害(パニック、社交不安)回避行動を減らし、不安の克服を促す
強迫性障害強迫観念と強迫行為の悪循環を断ち切る
PTSDトラウマ記憶の意味づけを再構成し、再体験を緩和
不眠症認知的な誤解(「眠れなければ大変」)を修正し、睡眠習慣を再構築

✅ CBTの作用機序まとめ図

[自動思考への気づき]
   ↓
[認知の再構成]
   ↓
[行動の変容]
   ↓
[感情の変化・症状の軽減]
   ↓
[再発防止・自立支援]

🎯 まとめ:CBTの治療的原理の特徴

要素内容
科学的根拠ランダム化比較試験に基づく多数のエビデンスあり
時間限定型多くは10〜20回程度の短期介入
構造化セッションごとに目的・宿題・フィードバックがある
主体性患者が「自分で気づき、選択し、実行する」力を育てる
多様性マインドフルネスやスキーマ療法、ACT(アクセプタンス&コミットメント療法)などへ拡張されている


認知行動療法の作用機序 (音声により解説します)

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    2. ② 認知の再構成(Cognitive Restructuring)
    3. ③ 行動実験(Behavioral Experiment)
    4. ④ 行動活性化(Behavioral Activation)
    5. ⑤ 曝露療法(Exposure)
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  • 📘 臨床応用と対象疾患
  • ✅ CBTの作用機序まとめ図
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