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神経認知障害群 (6D70-6E0Z)

認知症とは

銀座泰明クリニックの患者さんは平均年齢20-40歳の青壮年層の方が多く、60歳を越える方は比較的、少ないため、認知症の患者さんも少ないです。しかし、高齢化社会を反映し、一定数、お越しになられています。そこで、認知症について改めてまとめましょう。

認知症とは、後天的的な原因により生じる知能の障害と定義されます。最大の危険因子は加齢であり、65歳以降、5歳ごとに倍増し、85歳では27%に達します。現時点で日本の65歳以上の高齢者の有病率は15%程度と推定されています。


認知症の基礎疾患は上図のように大きく3つに分類されます。アルツハイマー型、レビー小体型、血管性です(相談e-65.netより)。世の中では、アルツハイマー型が有名ですが、レビー小体型もその約半数を占めています。この認知症は一言で言うと、アルツハイマー病+パーキンソン病です。アルツハイマー病の典型的な症状である記銘力の低下のような認知機能障害からはじまり、パーキンソン病の典型的な症状である、1. 振戦(手足の震え)、2. 動作緩慢(動作の鈍さ)、3. 筋固縮(筋肉の固さ)、4. 歩行障害、姿勢反射障害(小刻みで足をすった歩き方、転倒しやすさ)、さらに幻視を交えた錯乱を呈することが少なくありません。

その他に含まれますが、約5%に相当する前頭側頭型も見逃せません。これは1996年にFTLD. Fronto-Temporal Lobar Degenerationと定義され、従来はピック病とも呼ばれていた疾患です。名称の通り、前頭葉と側頭葉に変性を生じ、初期は性格変化や行動異常を前景とし、認知機能障害は目立たないことを特徴とします。ピック病と呼ばれていた頃は反社会的行動を起こすことが有名で、これまで真面目に生活してきた方が50歳前後から、放火・窃盗・性的逸脱などの触法行為を生ずるため、周囲の方々が驚いてしまいます。最近、脳科学の進歩により人格を司る部位が次第に明らかとなり、ピック病の中心的病巣と考えられていた眼窩面の傷害が注目されています。この部位が傷害されることにより、Going my way behaviorと称される、本人の気ままな言動、周囲の人々に配慮を欠く態度などが生ずると考えられています。経過としては10年程で、アルツハイマー型のような認知機能障害が顕著になります。

認知症の基礎疾患を、さらに広く眺めてみましょう。上図における「皮質性の特徴」とは、記憶障害(主に記銘力の低下)、失語・失行・失認などの症状を前景とし、行動障害は目立ちません。反対に「皮質下性の特徴」とは基底核・視床・脳幹などの病変に由来し、運動障害を伴います。「虚血性の特徴」は急性に発症し、段階的に増悪、そして神経学的症候(脳・神経における限定された病変により生ずる症状、麻痺・痺れ・痛み・筋力低下など)を特徴とします。「運動障害」とは前期の「皮質下性の特徴」とほぼ同じ病態です。「慢性錯乱状態」は様々な病因により生じますが、血液・画像・脳波検査などを行い、原因疾患を診断します。「正常圧水頭症」は歩行障害(転倒)や排尿障害(失禁)を特徴とし、画像所見と髄液穿刺により診断が得られます。最後に「機能性精神病」は次に述べる「4つのD」に相当します。

認知症 Dementiaと確定診断する前に、せん妄 Deliriumなどの意識障害、妄想 Delusionうつ病 Depressionの鑑別も忘れてはなりません。これら「4つのD」は高齢者の精神症状として併発しやすいため、一つの診断にとらわれないことが大事です。さらに、高齢者は身体疾患や薬物(特にステロイドや抗がん剤など)の影響を受けやすいため、いわゆる「症状性精神障害」について常に考慮しなければなりません。

認知症の初回面接をご紹介します。まずは主訴や受診理由をお尋ねします。アルツハイマー型認知症は緩徐に進行するため、明確な起始 onset が語られることは少ないです。経過 course は記憶障害、精神症状・行動異常、生活状況のエピソードを伴い語られることが多いです。特に、アルツハイマー型認知症では、記銘力の低下が主訴となることが多いです。なお、記憶とは、1.記銘、2.保持、3.再生、4.再認、により構成されますが、保持・再生はしばらく保たれ、いわゆる「昔のことをよく覚えているけれども、今言ったことを忘れてしまう、同じことを繰り返し質問する」といったエピソードが語られるわけです。

行動異常や精神症状は、BPSD. Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia と呼ばれ、家族や介護者の多くは、記銘力の低下より、こちらの問題に悩まされます。暴言暴力、昼夜逆転、徘徊・行方不明、物盗られ妄想・嫉妬妄想などがよく訴えられます。いずれも向精神薬で緩和できますから、神経内科医よりも、精神科医と相談されることをお勧めします。


そして、介護保険を申請される際は、主治医へBPSDにより、どれだけ介護に負担を生じているのか、「主治医・意見書」に詳しく記載していただくようお願いしましょう。ともすると、医師は家族の介護負担を十分聴かず、上記の記憶障害や長谷川式・MMSEの点数、頭部MRIなどの画像所見などを中心に記載してしまうため、介護度が低く評価されてしまう傾向があります。介護度が高く評価されるのは、上図における「生活状況」や下図における「身体状態」が第一で、BPSDによる行動異常や精神症状は十分に評価されていないのが実状だからです。下図(価格.com/厚生労働省より)は介護保険を申請する際の流れと介護度を示したものです。




認知症は加齢とともに増加し、90歳を過ぎれば半数以上、95歳を過ぎれば八割以上の方々が罹患することが確認されています。最近は「軽度認知機能障害 MCI. Mild Cognitive Impairment」 という概念も提唱されています。うつ病という程ではないけれど、やる気がなくなった、物覚えが悪くなったという症状を特徴とします。有病率は65歳以上の約5%で、4-5年の経過で半数がアルツハイマー型認知症などへ進行することが確認されています。つきましては、決して他人事ではなく、誰もが罹患しうる疾患として認識し、早期発見・早期治療および適切な介護・ケアが望まれます。

シリーズ最新作にして完結編「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル」
テーマは「看取り」と 「死」

認知症の母・宏子さんと娘の関口祐加監督の自宅介護生活は8年目に突入。宏子さんの認知症はゆっくりと、でも確実に最終ステージへと進んでいます。「死ぬのを忘れている」と笑っている宏子さんですが、2014年の夏から2015年の冬にかけて、脳の虚血症発作で4回倒れ、意識不明となり救急搬送されました。一命はとりとめたものの、宏子さんは発作で倒れたことを全く覚えていません。このことをきっかけに、関口監督は母の死を初めて意識し、看取りについて考えるようになりました。

母の“命”は介護者である私が預かっている。
その責任をどう考え、何を準備すればいいのか。

この問いが新たな「認知症探求の旅」の出発点となり、「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル」の製作がスタートしました。

監督の言葉:関口 祐加(せきぐち・ゆか)
幸せな「死」=ハッピーエンディングを求めて、新たな旅がはじまる。
「毎アル2」完成後、母は脳の虚血症発作を起こし4回も意識不明で倒れ、その度、不死鳥のようによみがえりました。しかし、同時に認知症も進行し、2017年1月の脳検診では、記憶を司る海馬の大幅な萎縮と脳内の白質病変の増加を確認しました。母は「死ぬのを忘れている」と笑いますが、いつ脳の虚血症発作を起こすか分からない状態です。母のアルツハイマー型認知症と付き合って丸7年、「この先どのぐらい母を支えていけるのだろう?」と初めて在宅介護に不安を覚え、母の「命」を預かる責任の重さを感じました。
認知症になっても、ならなくても、誰にでも人生の最終章はやってくる。最新作「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル」は、認知症だけでなく、普遍的なテーマである「死」についても深く掘り下げたいと思っています。特に今回、国内外の認知症ケア施設、緩和ケア病棟などを撮影して「幸せな『死』=ハッピーエンディング」はあるのだろうかと考えるようになりました。自然死、平穏死、尊厳死、安楽死…….命が尽きるその瞬間まで「生きてきてよかった」と心から満足を得られる死とは一体どのようなものなのか?
えっ、深刻すぎる?どうぞご安心ください。「毎アル」シリーズ特有の笑いとユーモアの精神満載ですから!おかげさまで海外を含む大きな撮影はすでに終え、現在、編集・仕上げの大詰めを迎えています。いよいよ完成まで、これからが正念場。皆さまからご支援をいただきたく、『毎アル ザ・ファイナル』完成応援プロジェクトを立ち上げた次第です。ご参加くださいますよう、どうぞよろしくお願い致します。

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