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社会療法

災害とPTSD


平成23年3月11日(金)14時46分、東北・三陸沖を震源とする大地震が起きました。死者・行方不明者は2万人、避難者は30万人を超えています。東北はもとより、関東でも大きな揺れを生じ、様々な被害を生じています。これに起因し、精神的な不安定を生じた方も少なくありません。

まず、直接、震災・被害に遭われた方々は生命の危険を感じたことでしょう。立っていられないほどの揺れ、その後、15mを超える大津波に襲われ逃げた方々はまさに「死ぬかと思った」という体験をしています。この場合、数時間から数日間は「急性ストレス反応」を生じ、「困惑」から取り乱したり、言葉が出なくなってしまうことがあります。

このような状態に対する心理的援助は、「自分は一人でない」という心のつながりを得ることが重要です。心配なことは我慢せず、話せる相手がいることは心づよいものです。困っている際は、誰か信頼できる方へ寄り添い、心理的な援助を求めましょう。
急性ストレス反応は数日間で治まるとされていますが、1ケ月以上も続く場合は二次性の障害を生じていると考えます。いわゆるPost-Traumatic Stress Disorder, 心的外傷後ストレス障害です。強いストレスを負った後しばらくしてから、様々な精神症状と生じる心の病気です。具体的には以下のような症状が認められます。
・精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状
・トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向
・事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や
全体に関わる追体験(フラッシュバック)

この結果、精神的苦痛もさることながら、その後の生活・人生においても回避歪曲といった行動をもたらすことになります。また地震に対しても自分が悪かったからと自責的になっていたり、周囲に対して被害的になったりしてしまいます。具体的には、地震に関わる情報を避け、現実的に必要な行動をとれなくなったり、家族が亡くなったのは自分が適切な判断をしなかったからと後悔したり、思い通りの援助を得られないと周囲に不満を覚えたりしまうのです。
このような状態に対しては、SSRIをはじめとした抗うつ薬による薬物療法と適切な精神療法が求められます。精神療法は本人の心理的な苦痛に対する支持的な対応と、それに伴う様々な認知・行動の歪みに対する再構成が求められます。治療は長期間にわたる場合が少なくありませんから、信頼できる治療者と根気強く改善に向けて取り組むことが望まれます。

今回の地震は規模も程度も想像を絶するものでした。日常生活が送れるようになっても、引き続き、不眠、不安、抑鬱はじめ様々な精神症状を生ずる可能性があります。その際は速やかに精神科を受診して適切な治療を受けましょう。

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