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精神医学

森田療法の作用機序

森田療法(Morita Therapy)は、神経症(特に不安障害や強迫性障害)に対して、日本で独自に発展した精神療法であり、「あるがまま」を受け入れることによって、不安や症状に振り回されない生き方を確立することを目的とします。

その作用機序は、不安の自然経過・注意の転換・行動の再教育など、東洋的な思想と現代心理学の統合的視点から説明できます。


🧠 1. 森田療法の基本理念

概念内容
あるがまま(自然受容)不安や症状をなくそうとせず、それを持ちながら行動する
目的本位「気分」ではなく「目的」に従って行動する(行動の主体性回復)
感情の自然経過感情(不安・恐怖・苦痛)は、やがて変化し、やり過ごされるものという前提

🔬 2. 森田療法の作用機序:心理学的プロセス

🔹① 感情の「排除欲求」からの脱却

  • 人は「不安を感じたくない」「症状をなくしたい」と思うが、この症状を排除しようとする努力が、かえって症状への注意を強めてしまう。
  • 森田療法では、この「コントロール願望」を手放し、不安をあるがまま受け入れる態度を育てる。

🔹② 注意の転換:内向から外向へ

  • 神経症者は、自分の内面(症状・思考・感情)に過剰に注意を向ける傾向がある。
  • 森田療法は、作業・仕事・日常生活などの「行動」に意識を向けることで、注意の方向を内から外へシフトさせる。

🔹③ 行動の積み重ねによる自然治癒

  • 不安や嫌な気分があっても、目的を持って行動し続けることで、症状があっても生きていけるという自己効力感が育つ。
  • 行動の中で感情が「やり過ごされ」、結果的に不安が軽減される(※感情の自然経過)。

🧬 3. 神経科学的な仮説的機序

脳部位関連機能森田療法との関係
扁桃体恐怖・不安の処理「不安を受け入れる」ことで過剰活性が減衰
前頭前皮質感情の抑制と実行機能「目的本位の行動」により実行機能が強化される
島皮質身体感覚への気づき自分の感情・身体に対するマインドフルな態度を促進
DMN(デフォルトモードネットワーク)自己内省的活動行動への集中によりDMNの過活動が抑制される(反芻の減少)

🔄 4. 森田療法の実践ステップとそれぞれの作用

ステージ内容治療的意義
① 臥褥期(がじょくき)刺激を断ち、横になって過ごす自然の回復力にゆだね、症状を観察する
② 軽作業期掃除・洗濯など単純作業を開始身体感覚と行動への注意転換
③ 重作業期能動的な作業を行う行動の中で「目的本位」を実感
④ 社会復帰期外出・仕事・人との関わりを再開「症状を持ちながら生きる力」の確立

※現在の外来森田療法では、これらを外来や日常生活の中で段階的に応用することが多い。


💡 5. 森田療法が有効な対象

症状・疾患適応性
強迫性障害(OCD)「不安をなくすための儀式的行動」からの脱却を支援
パニック障害・社交不安障害発作や赤面への恐怖に対して、「あるがまま」の受容を促す
心気症(病気不安症)身体感覚への過剰注意から距離をとる
うつ状態(軽度)気分に支配されずに行動する力の回復

✅ 森田療法の作用機序まとめ

【症状の排除欲求を手放す】
 ↓
【不安・不快を「あるがまま」に受容】
 ↓
【注意を行動や目的へ向ける】
 ↓
【感情はやがて変化する(自然経過)】
 ↓
【自発的行動が回復力を育てる】

✍️ 森田療法の特徴的キーワード

  • 「症状即療法」:症状そのものが回復へのプロセス
  • 「恐怖突入」:不安を避けずに向き合うことで脱感作される
  • 「治そうとしない努力」:治そうとすること自体が苦悩を深める


森田療法の作用機序 (音声により解説します)

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