性格と犯罪には一定の相関があり、特に「特定の性格特性」があると、逸脱行動・反社会的行為・攻撃性・衝動性といった犯罪リスクが高まりやすいことが知られています。
ただし、「性格=犯罪の原因」ではなく、「性格傾向 × 環境要因 × 認知パターン × トラウマ」の相互作用として理解することが重要です。
🔷 性格と犯罪の相関をとらえる4つの視点
観点 | 内容 |
---|---|
① パーソナリティ特性(ビッグファイブ等) | 性格傾向と反社会的傾向との統計的な関係 |
② パーソナリティ障害(人格障害) | 犯罪リスクが高い人格構造(例:反社会性・自己愛性) |
③ 犯罪類型別の性格傾向 | 犯罪タイプによって異なる性格傾向のパターン |
④ 犯罪と性格の相互形成過程 | 「性格→犯罪」だけでなく、「犯罪経験→性格変化」も含む |
① ビッグファイブ性格特性と犯罪傾向の相関
特性 | 高 or 低 | 犯罪リスクとの関係 |
---|---|---|
外向性(Extraversion) | 高すぎる場合 | 衝動性・支配欲・対人操作と関連(暴力・詐欺) |
協調性(Agreeableness) | 低い | 共感性が乏しく、加害・搾取に躊躇がない |
誠実性(Conscientiousness) | 低い | 自己制御の弱さ・ルール無視・衝動性と関連 |
神経症傾向(Neuroticism) | 高すぎる | 感情不安定性が暴発・依存・自傷型犯罪に結びつくことも |
開放性(Openness) | 高すぎ/低すぎ | 高すぎ→逸脱傾向/低すぎ→保守・固執的な行動化 |
👉 特に「低い協調性+低い誠実性+高い外向性」の組み合わせは、反社会的行動と有意な相関があるとされます(DeLisi et al., 2009)。
② パーソナリティ障害(人格障害)と犯罪
人格障害は犯罪傾向と強い関連があります。以下に主な類型と相関する犯罪特性を示します。
人格障害 | 犯罪との相関 | 具体例 |
---|---|---|
反社会性パーソナリティ障害(ASPD) | 最も強い相関。共感性の欠如、規範無視 | 暴力・窃盗・詐欺・傷害・性犯罪 |
境界性パーソナリティ障害(BPD) | 自傷・他害・対人トラブル型の犯罪 | 恋愛トラブル/リストカット後の加害など |
自己愛性パーソナリティ障害(NPD) | 優越感・支配欲からの搾取・詐欺行為 | 経済犯罪・デートDV・セクハラ |
妄想性パーソナリティ障害 | 被害妄想による突発的攻撃 | 怒りに基づく傷害・家族内殺人など |
③ 犯罪類型ごとの性格傾向
犯罪タイプ | 傾向する性格 |
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🔪 暴力・殺人 | 衝動性/低共感性/怒りの制御困難(ASPD/BPD傾向) |
💰 窃盗・詐欺 | 操作性/罪悪感の欠如/反社会性(ASPD/NPD) |
👤 ストーカー・性犯罪 | 強い執着性/自己愛/被害者を対象化する思考 |
🏠 DV・家庭内暴力 | 支配欲/依存と攻撃の混在/境界性傾向 |
🚗 飲酒・薬物犯罪 | 自制力の低さ/快楽志向/リスク認識の欠如 |
④ 犯罪と性格の「双方向モデル」
犯罪は性格の反映であるだけでなく、犯罪経験そのものが人格変容を促すこともあります。
◆ 犯罪 → 性格への影響
- 収監・社会的排除 → 被害者意識や反社会的思考の強化
- 暴力経験の反復 → 鈍麻・共感喪失・冷酷化
- 犯罪的ネットワーク → 「逸脱が当たり前」という規範内化
👉「犯罪→性格変化→再犯」の悪循環スパイラルが生じやすくなります
🔶 犯罪傾向と性格の発達的背景(例:発達×性格)
背景因子 | 影響する性格傾向 | 犯罪リスク |
---|---|---|
幼少期の愛着不全 | 共感性の低さ・衝動性 | 反社会性・攻撃性 |
虐待・ネグレクト | 境界性・依存的傾向/自傷他害 | DV・リストカット・関係破綻型犯罪 |
発達障害(ASD・ADHD) | 情緒調整の困難・誤解される対人様式 | 衝動型犯罪/性的不適切行動など |
🔷 性格と犯罪のまとめ
ポイント | 内容 |
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性格は「犯罪傾向を高める素地」になりうる | 特に「衝動性」「共感性の欠如」「自己中心性」など |
犯罪者=性格異常者ではない | 性格と環境・トラウマ・機会の相互作用として理解すべき |
パーソナリティ障害は犯罪リスク因子 | だが、全てのASPDやBPDが犯罪を犯すわけではない |
犯罪と性格は双方向的に形成される | 犯罪による人格の「冷却化」「逸脱の正当化」もある |

性格と犯罪 (音声により解説します)