「リラプス・プリベンション(Relapse Prevention:再発予防)」は、依存症や感情調整障害、気分障害などの治療において非常に重要な「再発を防ぐための心理教育的・行動的戦略」です。もともとはMarlatt & Gordon(1985)によって開発され、認知行動療法(CBT)をベースに構築されています。
🧠 リラプス・プリベンションの基本定義
項目 | 内容 |
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🔄 定義 | 問題行動(飲酒・薬物・暴力・過食・ギャンブル・うつ状態など)の再発を防ぐ心理的介入法 |
🎯 目的 | 一度改善した状態を維持し、再発リスクを最小限に抑えること |
🧠 理論背景 | 認知行動療法、社会学習理論、トリガー理論、ストレス脆弱性モデル など |
🗂 リラプス・プリベンションの構成要素(モデル全体像)
以下は、Marlattの再発モデル(RPモデル)に基づく典型的な構造です:
1. 高リスク状況の特定
- 飲酒誘発状況(友人との会話、イライラ、不安、祝杯など)
- 気分の落ち込み、孤独、疲労、怒りなど
- 「やめようと決めた自分」と「誘惑」の対立
2. 対処スキルの習得
- 欲求が来た時の自己対話(セルフトーク)
- 注意の切り替え法/リラクゼーション法/断るスキル
- 状況別の「行動リハーサル」
3. 再発の早期兆候の気づき(再発サイン)
- 気分の変化、スリップ的思考、「少しだけなら…」などの認知歪曲
- 睡眠の乱れ、人との関係悪化、スケジュールの破綻など
4. 「スリップ=失敗ではない」という再定義
- 一回の失敗(lapse)を「再発(relapse)」にしないための再構成
- 「ABSTINENCE VIOLATION EFFECT(禁断違反効果)」の理解: 「もうダメだ」となってしまう前に、思考と感情を切り離す訓練
5. ライフスタイル全体の再設計
- 健康的ルーティン(運動・食事・睡眠・支援者との接触)を整える
- 「再発しづらい生き方の構築」こそが根本的な再発予防
📊 リラプス・プリベンションのワークモデル(図解構造)
[トリガー]
↓
[高リスク状況]
↓ →(対処スキルあり)→ [回避・代替行動]
↓ →(対処できず)→ [スリップ]
↓
[禁断違反効果(AVE)]
↓
[罪悪感・自責・あきらめ]
↓
[完全な再発(Relapse)]
💡 適用される主な臨床領域
対象 | 応用例 |
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アルコール依存 | 飲酒日記・飲酒欲求サークル・断る練習など |
薬物依存 | 誘惑に対する対処技法、再発トリガーリスト |
過食・摂食障害 | 感情的摂食のトリガー管理、セルフモニタリング |
ギャンブル障害 | 場所回避・衝動コントロール訓練・金銭管理スキル |
気分障害(うつ・双極性) | 落ち込みの初期兆候リスト、生活の再構成 |
境界性パーソナリティ障害 | 感情・対人トリガーの自己観察とスキル訓練(DBTと併用) |
🧰 代表的な再発予防スキル
スキル | 内容 |
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トリガー分析 | 「いつ、どこで、誰と、どんな気分で」リスクが高まるか |
行動置換技法 | 「欲求が来たら○○をする」具体的代替行動の設計 |
セルフトーク再構成 | 「ダメな自分」→「工夫して継続している自分」へ |
ソーシャルサポート活用 | 支援者への相談・報告スキル、リカバリーメイトとの連携 |
再発後プランニング | スリップした時の対応マニュアルを事前に作成 |
