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パーソナリティ症群および関連特性 (6D1)

リストカット・自傷行為


「リストカット」かつては20代の女性が失恋後に行った印象がありましたが、最近は10代の男性・女性とも約10%の方が行っているといいます。しかし問題は、リストカットを行っている方のほとんどがその行為を「誰にも相談できていない」ということです。

そもそもリストカットはなぜ行われるのでしょう。ともすると「別れた彼の気を引くため」「周囲の同情を買うため」など考えられがちですが、そうではありません。本人は「自分を切り刻むほど辛い気持ち」なのです。しかしその気持ちを上手く説明できないため、手首を切ることで「代償(かわりにつぐなうこと)」しています。本来は誰かに言葉や文字で伝えられると良いのですが、口下手だったり、対人不信に陥っていたりすると、なかなかそうもいきません。

リストカットを行う方の多くは「孤独感」「空虚感」を覚えています。誰にも頼れないという「無力感」も覚えています。その背景に幼少期からの親子関係や家庭環境に問題があると考えられます。両親から「虐待」を受けていた、家庭内が「不和」であった、両親や兄弟・姉妹に精神疾患の方がいたなど、複雑な生い立ちの方が少なくありません。一言で表すと「安心した環境で育ってこられなかった」ということです。このため、他人へ心を開けず、つらい気持ちを閉じ込め、自分の体を傷つけることで代償しているのです。

リストカット/自傷行為の背景に想定される精神疾患
リストカット/自傷行為は「症状」であり「病気」ではありません。病気として想定される精神疾患はいくつかあります。最も可能性の高い疾患は「境界性パーソナリティ障害」です。アメリカ精神医学会によりますと「対人関係、自己像、感情などの不安定および著しい衝動性を特徴とします。見捨てられることに対して敏感で、そうなるのをなりふりかまわず避けようとします。他者を過剰に理想化したかと思うと同じ人物をこき下ろすという具合に、その対人関係は極端で不安定です」と定義されています。診断基準には「自殺の脅かし、そぶり、行動、または自傷行為の繰り返し」を含んでおります。

次に「解離症候群」が挙げられます。これはアメリカ精神医学会によりますと「意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻および/または不連続」と定義されています。分かりづらいでしょうが、端的に申しますと、強いストレスにより、自分の意識・記憶・行動などが一時的に失われてしまう病態です。ドラマや映画のワンシーンでもある「ここはどこ?私は誰?」という現象がまさに解離の症状です。このためリストカットなど自傷行為を行っても痛みや記憶を覚えないことが少なくありません。

ほか、重篤な疾患として統合失調症や躁うつ病の前駆症状(明らかに発症・発病する前に起きる症状)、アルコール依存症・薬物依存症の合併症(一緒に起きる症状)として生じることもありますから、予断は許されません。

リストカット/自傷行為を止めるためには
それでは、リストカット/自傷行為を生じていたらどうしましょう。それを一つの「対処行動(コーピング)」として黙認してよいのでしょうか。いえ、そのようなことはあってはなりません。リストカット/自傷行為は「誤った」対処行動ですから「適切」な対処行動へ治していくべきです。すなわち、自分のつらい気持を「言葉」や「文字」により表現できるようにしていくべきです。

しかし、自分一人では難しいことでしょう。もともと口下手だったり対人不信だったりして、リストカット/自傷行為しか、自分のつらい気持ちを表現できなかったのですから。まずは周囲のどなたかに相談することからはじめしょう。これを適切な「援助希求行動」と呼びます。

援助を受けた側が心がけるべきことは、本人がリストカット/自傷行為をしていたことを叱ったり、責めたりしないことです。本人はそうせざるをえなかったからそうしていたのみで、したくてしていたわけではなかったのです。したがって、行うべきことは本人のそばに寄り添い、気持ちをくみ取ることです。心理学の専門用語では「傾聴(耳を傾け熱心に聴くこと)」「共感(相手の感情や体験を自分のことのように感じること)」「受容(相手を否定も肯定もせずそのまま受け入れること)」と呼びます。

そして、上記のように「リストカット/自傷行為」の背景には高率で「精神疾患」が想定されますので、「精神科」を受診・紹介するのが無難でしょう。どうぞお大事にして下さいませ。

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