LINE を使った受診日時のお知らせを一時的に休止しています。詳しくはこちらをご覧ください。

東京・銀座の心療内科・精神科・メンタルクリニック

オンライン
予約
お問い合わせ
アクセス
診療時間
精神医学

ホスト依存症

「ホスト依存症」とは、ホストクラブに通うことをやめられず、特定のホストに対して強い愛着・執着・幻想を抱き、生活・精神・経済に深刻な影響が出る状態を指します。
これは正式な診断名ではなく、実態としては「恋愛依存」「対人依存」「ギャンブル・買物依存」などの症状が複合した心理的依存症の一種と考えられます。


🔷 ホスト依存症とは?:特徴と背景

◆ 主な特徴

  • 毎日のようにホストクラブに通い、数十万〜数千万円を費やす
  • 特定のホストに「本命視」されたい、愛されたいと願う
  • 風俗や借金でお金を工面してでも通い続ける
  • LINEやアフターのやりとりに一喜一憂し、自己価値が左右される
  • 自尊感情の低さ・寂しさ・孤独・トラウマが背景にあることが多い

🔶 ホスト依存症の心理メカニズム(なぜハマるのか)


① 【承認欲求 × 疑似恋愛構造】

  • ホストは「君が一番」「俺だけを見て」と言葉をかけ、承認と恋愛幻想を巧みに演出
  • 顧客は、日常で満たされなかった「誰かに愛されたい」という欲求をお金で買うことで得ようとする

👉《疑似恋愛=自尊感情の補償》


② 【報酬系の中毒化(ドーパミンの強化)】

  • 指名された・LINEが来た・同伴できた…など、不確定な報酬が強烈な快感をもたらす
  • 脳の報酬系(ドーパミン回路)が過敏化し、ギャンブル依存と同じく「やめたいのにやめられない」状態に

👉《ご褒美が来るかどうかわからないから、もっとハマる》


③ 【見捨てられ不安と「特別扱い幻想」】

  • 「自分だけが本命になれる」「あの子より私が愛されているはず」という選ばれたい願望が強化される
  • これは幼少期の「愛されなかった体験」や「無条件の愛を知らないこと」に由来する場合が多い

👉《特別になりたい心の飢え》


④ 【自傷的浪費(借金・売春)】

  • 拒絶や無視への反動として、「もっと金を使えば愛される」と身体・金銭を投げ出す行動に出る
  • これは自罰的(自己破壊的)なスキーマに基づく可能性が高い(例:境界性パーソナリティ特性)

👉《私は価値がない → 金で価値を買う》


⑤ 【共依存構造】

  • 顧客:お金と愛を与えることで「必要とされている」と感じる
  • ホスト:依存的な客に囲まれることで「自分が求められている」と感じる
    → 相互依存的な“抜けられない関係性”が成立する

👉《依存と支配のゲーム》


🔷 関連する精神病理・診断概念

疾患・傾向内容
💠 恋愛依存症(Love Addiction)恋愛そのものに依存。相手が変わっても同様の関係を繰り返す
💠 境界性パーソナリティ障害見捨てられ不安と過剰な愛着が交互に出現する。感情調整が困難
💠 自己愛性パーソナリティ障害特別扱いされたい/理想的なパートナーでいたいという欲望
💠 対人依存(ヒト依存)他人を通じてしか自分の価値を感じられない状態
💠 ギャンブル・買物依存との併存金銭行為による報酬刺激を追い求めるパターン

🔷 ホスト依存症の症状と影響

領域問題内容
💸 経済的借金/クレジット地獄/風俗就業/親からの搾取
🧠 精神的抑うつ/情緒不安定/自傷・自殺未遂
💔 対人関係家族や友人との断絶/孤立/DV被害も
👤 社会的機能学業・仕事の放棄/夜職・非正規化/自己破壊的生活

🔶 治療と支援の方向性


◆ ① 精神療法的アプローチ

方法内容
認知行動療法(CBT)歪んだ認知(=「彼が本気で私を好き」)を修正
対人関係療法(IPT)不健全な愛着パターンの再構築
スキーマ療法幼少期の「愛されなさ」の補償としての依存を扱う
精神力動的療法無意識的な欲望・母子関係の再演を解明

◆ ② 社会的支援・自助

方法内容
自助グループ(SLAAなど)性・愛着依存の仲間による回復支援
金銭管理サポート自分でお金を管理できない場合は親族・支援者による代行
風俗支援/夜職卒業支援生活再建と自己価値回復のサポート
ピアサポート元依存経験者による伴走支援(脱却モデル)

🔷 回復へのキーワード:「自分の人生を取り戻す」

  • ホスト依存は、「愛されたい」「特別でありたい」「満たされたい」という根源的な感情飢餓から生じます
  • 依存を断ち切るには、「もうこの人に価値を証明してもらう必要はない」と思える自己肯定感の回復が不可欠です
  • そして、“他者に尽くす人生”から、“自分のために生きる人生”へ転換することが、最終的な回復の道になります

🔶 まとめ

ポイント内容
ホスト依存症は「恋」ではなく「依存」愛ではなく、自我の穴を埋める行為になっている
背景にあるのは自己否定と愛着不安「見捨てられ不安」「自分は価値がない」など
回復には「自分の価値を自分で認める力」が必要誰かの承認ではなく、自分の人生を生きる力
医療・支援・ピアとのつながりが鍵単独での脱却は困難。支援ネットワークが重要
この記事は参考になりましたか?

関連記事

  • 🔷 ホスト依存症とは?:特徴と背景
    1. ◆ 主な特徴
  • 🔶 ホスト依存症の心理メカニズム(なぜハマるのか)
    1. ① 【承認欲求 × 疑似恋愛構造】
    2. ② 【報酬系の中毒化(ドーパミンの強化)】
    3. ③ 【見捨てられ不安と「特別扱い幻想」】
    4. ④ 【自傷的浪費(借金・売春)】
    5. ⑤ 【共依存構造】
  • 🔷 関連する精神病理・診断概念
  • 🔷 ホスト依存症の症状と影響
  • 🔶 治療と支援の方向性
    1. ◆ ① 精神療法的アプローチ
    2. ◆ ② 社会的支援・自助
  • 🔷 回復へのキーワード:「自分の人生を取り戻す」
  • 🔶 まとめ
  • -->
    PAGE TOP