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精神医学

『砂の器』の病跡学

映画『砂の器』(1974年、監督:野村芳太郎)は、松本清張の同名小説を原作とし、ハンセン病差別と個人のアイデンティティの問題を描いた社会派サスペンスです。病跡学(パトグラフィー)の視点から本作を分析すると、主人公・和賀英良(本浦秀夫)の精神構造には、以下のような特徴が見られます。


🧠 和賀英良(本浦秀夫)の精神構造と病跡学的分析

1. アイデンティティの再構築

和賀は、ハンセン病患者である父親との過去を隠し、戦後の混乱期に他人の戸籍を使って新たな人生を歩み始めます。このような行動は、自己のアイデンティティを再構築しようとする試みであり、過去のトラウマから逃れるための防衛機制と解釈できます。

2. 過去の抑圧と罪悪感

和賀は、自身の出自を隠すことで社会的地位を築きますが、過去を知る人物の出現によって、その抑圧された記憶が呼び起こされます。このような状況は、フロイトの精神分析理論における「抑圧された記憶の回帰」として説明され、強い罪悪感や不安を引き起こします。

3. 防衛機制としての合理化と否認

和賀は、自身の行動を正当化しようとする合理化や、過去の事実を否認することで、精神的な均衡を保とうとします。しかし、これらの防衛機制は一時的なものであり、最終的には崩壊し、精神的な破綻を招く可能性があります。


🔄 精神構造チャート(簡略図)

cssコピーする編集する[過去のトラウマ(ハンセン病患者の父との生活)]
      ↓
[自己のアイデンティティの再構築(他人の戸籍を使用)]
      ↓
[社会的成功と地位の獲得]
      ↓
[過去を知る人物の出現による抑圧された記憶の回帰]
      ↓
[防衛機制(合理化・否認)の発動]
      ↓
[精神的な不安定さと罪悪感の増大]
      ↓
[最終的な精神的破綻]

🧩 まとめ

『砂の器』は、個人の過去と社会的地位、そしてそれに伴う精神的葛藤を描いた作品です。病跡学的視点から見ると、和賀英良の行動や心理には、過去のトラウマから逃れようとする防衛機制や、アイデンティティの再構築といった要素が深く関与していることがわかります。本作は、個人の精神的な脆弱性と、それを取り巻く社会的要因がどのように作用し合うかを考察する上で、非常に示唆に富んだ作品と言えるでしょう。

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