
生活習慣病は、過食・過眠・運動不足・飲酒・喫煙・ストレスによりもたらされます。このうち、ストレスを除いた因子はどれも苦痛を伴わず、むしろ快楽を覚えるところが悪魔のささやきです。
若い頃は代償されますが、30-40代を過ぎると、遺伝を背景に、加齢に従い、肥満を生じます。そして、高血圧・高脂血・高血糖を発症し、動脈硬化を併発します。
しかし問題は、これらの疾患は苦痛を覚えないことです。痛くも痒くもなく、血液検査の異常値としてのみ示されるため、本人はなかなか病識を得られません。
このような状態が遷延すると、50-60代のある日、脳梗塞、心筋梗塞を発症し、救急搬送されることになるのです。
精神疾患に比較すると、病識を得られないところは、統合失調症や双極症・躁状態に似ています。特に躁状態は感情高揚・気分爽快であり、本人は全く病気という自覚はありません。しかし、その間、多弁・多動、乱費・過食などを行い、他者へ迷惑を行い、自分の健康や財産を損ない、後で後悔することになります。
統合失調症は周囲の出来事を被害的にとらえ、他者を攻撃したり、ひたすらおびえたりしています。実際は何も起きていないか、むしろ本人に過失があることも少なくなく、被害的な認知に陥ることが統合失調症の病理です。人格の成長のためには、多少、うつ病の自責的な認知が望ましいと考えられています。これは精神分析の「抑うつポジション」であり、内観療法の「お世話いただいたこと、お返しできたこと、ご迷惑おかけしたこと」であります。
このように考えると、身体疾患も精神疾患も、刹那の快楽を求める行為は健康を損なうことになるため、心身ともに自己を律することが、長期的な健康に通じ、他者とも友好的な関係を続けていけることに他ならないと存じます。