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精神医学

性犯罪と劣等感

◆ 1. 総論:性犯罪と劣等感の関係とは?

性犯罪の加害者には様々なタイプがいますが、「女性に対する劣等感」や「性的自信の欠如」が動機や背景にあるケースも少なくありません。これは、以下のような形で現れます:

表現される形内容
攻撃による自己誇示弱さや無力感を力で覆そうとする
復讐的性行動拒絶された経験への報復
優位性の確認女性より上に立つことで「男らしさ」を回復
セクシャル・エンタイトルメント自己価値の低さを「性」で補おうとする

◆ 2. 臨床心理学的な背景:劣等感と性犯罪の力動モデル

▼ 精神力動モデル(特に自己心理学や対象関係論を基盤とする)

項目説明
早期の愛着不全母親的存在からの安定した承認が得られず、女性に対するアンビバレントな感情(憧れと憎しみ)が形成されやすい
自己愛的脆弱性自己肯定感が低く、「男性らしさ」や「性的魅力」に強くこだわる
分裂的防衛女性を「理想化 or 軽蔑化」する二極思考。自分を守るために女性を見下す
投影的同一化劣等感や拒絶の体験を「女性が悪い」にすり替え、自分を正当化

◆ 3. 性犯罪の加害者類型と劣等感との関連

類型(Groth分類など)特徴劣等感との関係
権力型(Power-reassurance)自分に性的魅力があると「信じたい」願望極端な自信のなさと自己確認欲求
怒り型(Anger-retaliatory)女性全体に対する怒りと敵意過去の拒絶や劣等感からくる報復的動機
享楽型(Sadistic)支配・苦痛を伴う加虐的性行動劣等感を力の誇示で解消する傾向
機会型計画性が低く、衝動的女性との健全な関係経験の欠如からくる代償行動

◆ 4. 神経・発達的要因と女性への劣等感

▼ 発達障害や愛着障害、複雑性トラウマが関係することも

項目内容
発達特性(ASDなど)社会的コミュニケーションが苦手で、拒絶体験が多く劣等感を抱えやすい
複雑性トラウマ母親や女性からの虐待・無視 → 女性一般への「憎しみ」と「渇望」が共存
脳科学的観点報酬系の誤作動、扁桃体過敏性、前頭前皮質の抑制機能の弱さが見られるケースも

◆ 5. 社会的・文化的背景:男らしさの圧力と「拒絶トラウマ」

  • 社会的に「男らしくあること」「女性にモテること」が価値とされる文化圧力が強い場合、
    → 女性に拒絶されると、「自分の存在価値そのものが否定された」と感じる加害者がいる。
  • これが深刻な劣等感・恨み・性的執着に変換され、
    → 「性的暴力を通じて自己の力や価値を確認しようとする」行動へ。

◆ 図:性犯罪と劣等感の心理力動モデル(簡略版)

[早期の拒絶・トラウマ]

[女性に対する憧れと憎しみの両価感情]

[劣等感・性的自信の欠如]

[防衛:攻撃/支配/性による補償]

[性犯罪という形での「価値の回復」試行]

◆ 補足:治療・介入の示唆

アプローチ目的
認知行動療法(CBT)歪んだ女性観・性的信念の修正
感情調整訓練怒り・羞恥・拒絶感への対処
自己愛への介入弱さを認める力を育む(マスキュリニティの再定義)
愛着修復女性への投影を和らげ、健全な関係モデルを再構築

◆ まとめ

性犯罪と女性への劣等感の相関は、単なる「性欲」では説明できない心理的・発達的・社会的複合要因から成り立っています。とくに、女性との健全な関係構築に失敗してきたことが、支配や報復という形で歪んだ欲望となり、犯罪に至るケースが多いのです。


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  • ◆ 補足:治療・介入の示唆
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