以前にも「アスペルガー症候群」や「広汎性発達障害」についてご説明しました。それでも用語や定義が曖昧で誤解を生んでいることが多々あるようです。そこで、今回は”Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5, DSM-5″(アメリカ精神医学会)により新たに定義された用語である「自閉症スペクトラム障害」について解説しましょう。
「自閉症スペクトラム障害」とは「 臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強い特性をもつ障害」で下記のような特徴を有しています(本田秀夫先生)。
1. 臨機応変な対人関係が苦手
2.「こだわり」が強い
3.感覚過敏、具体的な情報への志向性、運動が不器用
4. いったん覚えたことをなかなか忘れない
5. 相対的な関係を理解するのが難しい・・・
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と言いましても、なかなかイメージがわきづらいでしょうから、架空の症例をご紹介しましょう。
36歳、男性、弁護士
生来、真面目だが融通がきかない、強情なところがある、勉強はできたが運動は苦手だった。地元の進学校を優秀な成績で卒業し、有名大学を卒業、司法試験を1年で合格、司法研修後、高収入を見込める弁護士を選択し、就業している。記憶力は抜群で、六法全書はもとより、様々な情報を覚えている。しかし、人の名前と顔が一致しないことが少なくない。人付き合いが苦手で、対人交渉に不安を覚え・ている、仕事以外の付き合いはほとんどない、趣味は鉄道と写真撮影、独身である。20代後半より不眠、不安を覚え、睡眠薬・抗不安薬を必要とするようになり、他院を経て、X-5年より当院へ通院している。毎月、定時定刻に受診し、型通りの会話するが、変化に乏しい、視線は合わないことが多く、表情は硬い、いつも同じような服装をしている。
いかがでしょう、少しはイメージがわいたでしょうか。さらに、分かりやすく具体的な特徴を列挙しましょう。
・社会性の問題が最も大きい
・同年代の友人と上手く付き合えない
・異性との交際が下手、「互いに満足いく」性的パートナーがいない
・いても一方的である、離婚率や別れる率が高い
・エキセントリック、リジッド(硬い)、強迫的、迷信やルーチンに縛られやすい
・流行遅れやサイズの合わない服を着る
・特定のことに興味を示す、「オタク」
・話し方が奇妙、文学的、学問的、単調
・非言語性コミュニケーションにも問題あり
・表情が硬い、視線の動き方、その逆に、過度なジェスチャーをする
・悪気なく他者を巻き込む、ボーダーラインは分かっていてわざとやる
・自分の考えに浸る、それが統合失調症の思考途絶に見えることもある
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ただし、上記の症例のように、東京・銀座にお越しになる患者さんは、いわゆる「高機能自閉症」です。「高機能」とは下記のような図でお分かりでしょう。
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すなわち、知的には問題ないけれど、自閉症的傾向の強い方々です。このような方々は知的には問題ないですから、「生き方の工夫」をすることにより、自閉症的傾向が緩衝されることでしょう。例えば、
・対象は常同行為、感覚過敏、友人関係など広範囲にわたる
・高機能だから対応が容易とは限らない
・問題を明確化し、本人へ理解させるには、手間・暇がかかる
・カミングアウトするかは本人が決める
・「普通はこうするもの」と伝えるとよい
・簡単な役割交換ならできるものである
・苦手な状況で特にできないことが目立つ
・本人の理解が異なっていても、忍耐と覚悟をもって対応する
・できることを明確な言葉で強化する
・家族ケアも含めて考える
・家族が長持ちするサポート体制
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さらに、職場の方々は下記の事柄をお試しになってはいかがでしょう。
・障害を「個性」と認めること
周囲の人々から理解と協力してもらう
・指示を出すときは、簡潔に、分かりやすく
複雑で曖昧なことは理解できない
空間・時間・手順の構造化
・仕事に集中できるような環境を整える
パーテーション
スケジュール
必要な物のみ
優先順位
・特異な感覚に配慮する
耳栓、サングラス、マスクなどを認める
身体接触を強要しない、休息を促す
・問題行動に対して過剰に反応しない
本人の気持ちが落ち着いてから指導する
すぐ叱らない、すぐ受け容れない
・注意する時は正しいやり方を指導する
本人のプライドを尊重し、具体的な方法を
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以前にも述べましたが大事なことは「適材適所」です。自閉症スペクトラム障害はじめ発達障害の方々は「障害」を有する反面、常人離れした「才能」を持っていることも少なくありません。周囲の方々は、患者さんの特性を理解し、才能をうまく活かしていただけるとをお勧めします。
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