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ぼくキレイ?


服飾倒錯的フェティシズム(F65.1/ICD-10)
敦36歳は某・広告代理店で活躍する会社員である。妻33歳・真智子と結婚5年になるが、子どもはいない。真智子はさすがに焦りを覚え、不妊治療を開始したが、敦は乗り気でない。敦は子ども嫌いではないが、子どもよりも好きな「趣味」があったのだ。


敦は身長166cm・体重55kg、小柄・細身ながら、身体はジムへ通い、筋肉質で締まっていた。社内では仕事もでき、後輩女性から「憧れの先輩」だった。しかし敦は女性に興味が持てなかった。と言って、男性に興味がある訳でもなかった。敦の興味は「自分」だった。


10年以上前、新入社員・歓迎コンパで、敦ら同期5人は女装して歌った。当時、流行していたアイドルを模し、”SKB 5.0″(S=新橋) として歌って踊った。他の4人は女装した「男性」だったが、敦は「女性」だった。小柄・細身の敦はむしろ一般女性よりキレイだった。先輩女性は5人の歌唱に喜々としながら、敦の美しさに「負けた」と思った。


それからだった。敦は夜間・土日、真智子が寝静まった後や、外出して不在時、真智子の服を身にまとった。真智子も身長160cmあるため、洋服はちょうど良かった。鏡に映る「自分」は美しかった。愛する妻・真智子より、自分の方が美しく見えてしまった。女装は繰り返され、化粧やウィッグも購入し、エスカレートした。それらはベッド下の収納箱に入れ、真智子の知らないところに隠された。


とある日曜の昼下がり、真智子は大学時代の女友だちと久しぶりに銀座のレストランでランチ、その後、テラス席でカフェしていた。歩行者天国となった大通りには大人や子どもが行き来していた。さすが銀座、キレイな人がいると感心していた。その中に見覚えのある服装を身にまとった「女性」が歩いていた。その「服」は真智子のお気に入りであった。「イヤだわ、同じ服を着ている女性いるなんて」と不快に思いながら、その「女性」を眺めた。どこかで見覚えのある顔立ち。「敦」だった。真智子は声を失い、体調不良を訴え、女友だちに別れを告げた。自宅へ戻るとやはり、お気に入りの「服」はなかった。呆然自失の真智子は、身の周りの荷物をまとめ、自宅から1時間ほどの実家へ帰ったのだった・・・


服飾倒錯的フェティシズム(Transvestic fetishism)
服装倒錯の空想が少なくとも6か月以上、行動化する。本人が女性としての自分を考えたり、心に描いたりすることにより、「性的興奮」を覚えるならば「自己女性化愛好症 Autogynephilia」という診断が相当する。典型的には、小児・思春期にはじまり、年月を経て、女性の服装して、女性として生きたいと思うようになる。稀であるが、女性が男性の服装して、男性として生きたいと思う例もある。いずれも、小児・思春期よりその萌芽は生じているが、親の教育により抑制され、青年期以降、独立してから顕在化することが多い。原因不明であるが、「性別違和」と同様、遺伝子の特別変異または胎児期の男性ホルモン不足(Androgen Shawer)であることが推測されている。

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