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小説

恋愛依存症


莉香(りか)29歳は外資系・金融会社に正社員として勤務するキャリア・ウーマンである。学生時代から成績優秀、就職後も積極的・外向的な性格から、バリバリ仕事をこなし、同僚や上司からも一目、置かれていた。しかし、プライベートでの事情は異なった。職場の姿は仮であり、本来の性格は消極的・内向的と言えるほど正反対だった。


プライベートの莉香はいつも不安や孤独を覚え、一人でいられなかった。誰かがそばにいなければならない、思春期以降は男性がそばにいないと「孤独死してしまうのではないか」というほど不安・焦燥に襲われた。交際男性は途切れることなく、頻繁に入れ替わった。それは、莉香は男性へ「依存心」が強く、頻繁に連絡し、関係を確認しないと安心できなかったからである。男性は交際当初こそ、それほど愛されているのかと嬉しく想うも、次第に連絡・確認は「束縛」となり、男性は関係から「解放」されたいと望んだ。


莉香の公私における性格の違いは、彼女の生い立ちにあった。三人姉妹の末子だった莉香は、それなりに可愛がられ育ったものの、衣服や持ち物は姉のお下がりばかりだったり、何かと姉二人と比較されたりしたことで、常に負い目を感じていた。いわゆる「低い自己肯定感」である。および、三姉妹ゆえ親の愛情も分散されざるをえなかった。父は仕事人間で、土日出勤もいとわず、三人の娘の養育費のために働いた。その代わり、娘らとの情緒的な接触は乏しかった。母は優しかったけれど、愛情は三等分され、どうしても先頭を行く長女の養育が優先になった。その結果、莉香は軽症ながら「愛情遮断症候群」に陥った。


聡明で成績優秀だった莉香は、思春期以降、高い理想を掲げ、勉学や仕事に励み、成功するため、外向的・積極的な性格を「演じた」。それは仮の姿であるため、日常のストレスに耐えきれず、プライベートで男性へ依存した。男性は依存に耐えきれず、しばらくすると彼女の元から去った。その繰り返しだった。


莉香が「何とかしなければならない」と思ったのは、30歳の誕生日を1ヶ月前に控えたある日だった。週末デートの約束をしていた男性と連絡が取れなくなった。このような体験はこれまでも何度かあった。「裏切られた」「浮気されのかしら」と男性を恨んだ。その後、しばらく思い返し、考えた。このような辛い体験をしたくない、どうしたらいいのかしら。最近流行りのAIにて調べてみたところ、次々と原因や対策などが返答された。「恋愛依存」正式な医学的病名ではないけれど、治療は相手を責めるのではなく、自分と向き合うこと、生い立ちを振り返るとのことだった。そこで、このような内容を専門としていそうな心理療法・施設へ予約を取った…

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