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心の病の起源・進化心理学に学ぶ

前々回は天才と心の病についてお話しました。人並み外れた才能は、幻覚・妄想や躁鬱を伴うことが少なくなく、これまで天才と呼ばれる人々は人知れず悩んできました。しかし非凡な才能は気分や思考の逸脱からもたらされると言っても過言ではなく、天才がしばしば心を病むのはやむをえないのかもしれません。統合失調症や躁鬱病という心の病が人類の歴史の中で「自然淘汰」をされることなく存在しているのは、天才の遺伝子をはらんでいるためという説もあります。

統合失調症の遺伝子を持つ人は風変わりで常識とは異なる思考や行動を起こすことがあります。いわゆる変人とも呼ばれる人で、周囲の人々はどうしてそのような考えや振る舞いをするのか理解に苦しみます。しかしこのような人々の発想は時に世紀の大発明を生じたり、混乱した世の中に一石を投じたりすることもあります。芸術家や博士と呼ばれる人が独特の風貌や言動をしたり、政治家でも「変人」と呼ばれた人が世の中を大きく動かしたりすることを思い出すと納得できるでしょう。特に後者に関して、大きくなり過ぎた集団が分裂する際、カリスマ的リーダーを生じるために必要とするという学説もあります。

躁鬱病の遺伝子を持つ人は社交的・精力的で、人一倍、元気に働きます。安定した集団のリーダーによく見られる性格です。イギリスやオーストラリアの元首相が気分障害を患っていたことは一般にもよく知られています。このような人は病的水準か否かは別として、凹んだり、悩んだりすることがよくあります。躁の時は迷いなく一直線に突き進みますが、鬱の時はこれまでの行程を振り返り、軌道修正するわけです。会社の経営や個人の人生において必要な過程と言えるでしょう。

躁状態は春夏起き、鬱状態は秋冬起きることは既にご存知でしょう。これは人類の長い歴史において、秋冬の寒冷期を生き抜くために、春夏の温暖期に一生懸命、働き、食糧を貯蔵することに役立った行動と言えます。イソップ童話の「アリとキリギリス」のお話を思い出すと分りやすいでしょう。しかし文明が発達し、冬場でも食糧を調達でき、暖房も完備される世の中になると、このような季節性の変動は不要となります。特に現代都市のようなコンピューター社会にて求められるのは、コンスタントなパフォーマンスであり、年内なり日内なりの変動はむしろデメリットとなってしまいます。

このように進化学の見地から人間の心理を解釈する学問を「進化心理学」といいます。この学問によると、病は必ずしも悪とは言えず、存在するにはそれなりの理由があるようです。従ってその理由を理解することにより、上手く共存していくことが望まれます。

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